- ・FEMSの仕組みと生産設備まで管理するBEMSとの違い
- ・エネルギー使用量の見える化や原単位管理といった省エネの具体的な手法
- ・FEMS導入で失敗しないための計画の立て方と注意点
- ・自家消費型太陽光発電と連携して省エネ効果を高める方法
FEMS(Factory Energy Management System)とは、工場で使われる電気やガスなどのエネルギーデータを計測・見える化し、生産設備や空調、コンプレッサーなどの運用改善につなげるエネルギー管理システムです。
工場の省エネで重要なのは、単に「工場全体で電気を何kWh使ったか」を見ることではありません。どの工程・設備が、いつ、どれだけエネルギーを使い、その使用量が生産量に対して適正なのかまで把握することで、具体的な改善策を検討しやすくなります。
FEMSにはエネルギー使用量を見える化するタイプから、設備を自動制御するタイプ、デジタル・AIを活用して運転を最適化する高度なタイプまであり、できることはシステムによって異なります。
この記事では、FEMSを工場の省エネにどう活用するのかを中心に、BEMSとの違い、計測する項目、導入手順、注意点、2026年の最新動向、自家消費型太陽光発電との組み合わせまで具体的に解説します。
FEMSとは?工場のエネルギーを見える化・管理する仕組み
FEMSは「Factory Energy Management System」の略で、日本語では「工場エネルギー管理システム」などと呼ばれます。
工場内の電力計や各種センサーなどからデータを収集し、設備やラインごとのエネルギー使用状況を確認・分析することで、省エネや運用改善につなげます。
FEMSで扱う代表的な情報には次のようなものがあります。
| データ | 確認できること |
|---|---|
| 電力量・電力 | 工場・ライン・設備ごとの使用量、ピーク、待機時の消費電力など |
| ガス・燃料 | ボイラーや炉など熱設備のエネルギー使用状況 |
| 設備稼働データ | 運転・停止時間、負荷状態など |
| 生産量 | 製品1個・1tなど生産量あたりのエネルギー使用量(エネルギー原単位) |
| 太陽光・蓄電池 | 対応システムでは発電量、充放電量、購入電力などをまとめて管理可能 |
重要なのは、FEMSを導入するだけで自動的に省エネになるわけではないという点です。
計測したデータから無駄を見つけ、設備の設定や生産スケジュール、運転方法などを見直し、その結果を再びデータで検証するという改善サイクルを回すことでFEMSの価値が生まれます。
FEMSとBEMSの違い|工場とビルで管理対象が異なる
FEMSとよく比較されるのがBEMS(Building Energy Management System)です。
どちらもエネルギーマネジメントシステムですが、大きな違いは主な管理対象にあります。
| 種類 | 主な対象 | 主な管理対象 |
|---|---|---|
| FEMS | 工場・製造拠点 | 生産設備、製造ライン、コンプレッサー、ポンプ、空調、照明、受変電設備など |
| BEMS | オフィスビル、商業施設、病院など | 空調、照明、換気、給湯など建物設備 |
| HEMS | 住宅 | 家電、空調、給湯、太陽光発電、蓄電池など |
BEMSが主に「建物」のエネルギー管理を行うのに対し、FEMSでは製品を作るための生産設備や製造工程まで含めて管理するのが特徴です。
例えばオフィスビルでは、空調の設定温度や照明の使用時間を改善することが中心になります。
一方、工場ではそれに加えて、
- 生産していない時間にもコンプレッサーが動いていないか
- モーターやポンプが必要以上の出力で運転していないか
- 同じ生産量なのに特定ラインだけ電力使用量が多くないか
- 設備の立ち上げが集中してデマンドピークを作っていないか
といった、生産工程そのものを含む分析が重要になります。
BEMSについて詳しく知りたい方は、BEMSとは?仕組みや費用、導入するメリットもご覧ください。
FEMSを使うと工場の省エネで何ができる?
① 設備・ラインごとのエネルギー使用量を見える化する
工場全体の電気料金や月間使用電力量だけを見ても、どこに無駄があるのかは分かりません。
FEMSを使ってラインや主要設備ごとに計測すれば、
- 停止中なのに電力を消費している設備
- 他のラインよりエネルギー原単位が悪い工程
- 昼休みや非稼働時間にも負荷が下がっていない設備
などを探しやすくなります。
「省エネしてください」という抽象的な指示ではなく、「この設備のこの時間帯を改善する」という具体的な対策に落とし込めるのが見える化のメリットです。
② 生産量あたりのエネルギー原単位を管理する
工場では単純な使用電力量だけで省エネ効果を判断すると、誤った評価になることがあります。
例えば生産量が20%増えれば、工場全体の電力使用量が増えても不思議ではありません。
そこで重要になるのが、
エネルギー使用量 ÷ 生産量
で見る「エネルギー原単位」です。
FEMSのデータと生産実績を組み合わせれば、「製品1個を作るために何kWh必要だったか」などを比較でき、生産量の変動を考慮した省エネ評価がしやすくなります。
③ デマンドピークを把握する
高圧受電の工場では、最大需要電力(デマンド)を管理することも重要です。
生産設備・空調・コンプレッサーなどが同時に高負荷になると、大きな電力ピークが発生します。
FEMSやデマンド監視機能を利用すれば、設定値に近づいた際に警報を出したり、対応するシステムでは一部設備の運転を調整したりできます。
最大需要電力が契約電力の算定に影響する契約では、ピークを抑えることで基本料金の抑制につながる場合があります。
太陽光発電によるピーク対策については、太陽光発電のピークカットとはでも解説しています。
④ 設備運転を自動制御する
FEMSには「データを見る」ことを中心としたシステムだけでなく、設備制御まで行えるシステムもあります。
- 空調設備の出力調整
- ポンプ・ファンなどの運転制御
- 蓄電池の充放電制御
- 設備の稼働時間調整
ただし、すべてのFEMSが自動制御に対応しているわけではありません。「見える化だけでよいのか」「設備制御まで行いたいのか」を導入前に決めておく必要があります。
⑤ データ分析やAIを省エネ・生産性向上に活用する
2026年3月、資源エネルギー庁は「デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き」を公表しました。
これまでの省エネ活動に加え、デジタル技術やAIを使って設備の運転条件や生産工程を最適化することが、省エネと生産性向上の両面から重要になっています。
実際、現在のEMSには、単純な見える化だけでなく、制御型やモデル予測制御など高度な機能を備えるシステムもあります。
ただし、AIによる異常検知・予測制御・予知保全などは製品によって機能が異なります。導入時には「FEMS」という名称だけで判断せず、自社が必要とする分析・制御機能に対応しているかを確認してください。
工場のどこから省エネする?FEMSで確認したい設備
FEMS導入時に、工場内のすべてを細かく計測する必要があるとは限りません。
まずエネルギー消費量が大きい設備や、改善余地がありそうな設備から計測すると効率的です。
| 設備 | 確認したいこと | 改善例 |
|---|---|---|
| コンプレッサー | 非稼働時の運転、圧力、負荷・無負荷時間など | 運転台数・設定圧力の見直し、漏れ対策 |
| ポンプ・ファン | 必要以上の流量・風量で運転していないか | インバータ制御、運転条件の見直し |
| 空調・冷凍冷蔵設備 | 時間帯・外気温・生産状況と消費電力の関係 | 設定温度、運転時間、設備制御の最適化 |
| ボイラー・工業炉 | 燃料使用量、稼働時間、負荷の変動 | 運転条件・立ち上げ方法などの見直し |
| 生産設備 | 待機電力、停止時間、製品ごとの原単位 | 待機運転削減、工程・生産計画の改善 |
まず大きな負荷から計測し、効果を確認してから対象範囲を広げる「スモールスタート」も有効です。
FEMS導入前に確認するべき4つのこと
1. 何を改善したいのか決める
「省エネしたい」だけではシステム要件を決められません。
- 電気料金を削減したい
- デマンドピークを下げたい
- 設備・ライン別のエネルギー原単位を把握したい
- CO2排出量算定の元データを整えたい
- 太陽光発電の自家消費を増やしたい
など、目的を具体化します。
2. 現在持っているデータを確認する
FEMS導入前に、次の資料を整理しておくと課題を把握しやすくなります。
- 電気・ガスなどの請求書
- 30分ごとのデマンドデータ
- 主要設備の定格・運転時間
- 生産量・操業時間
- 設備配置図・電気系統図
すでに取得できているデータと、新たにセンサーを設置しなければ取れないデータを分けて考えます。
3. どこまで細かく計測するか決める
計測ポイントを増やせば詳細な分析ができますが、センサー・通信・システム構築などのコストも増えます。
そのため、まず工場全体→建屋→生産ライン→主要設備というように、改善効果と計測コストのバランスを考えて粒度を決めます。
4. 見える化だけか、自動制御まで行うか決める
FEMSの機能によって導入費用やシステム構成は大きく変わります。
最初は見える化から始め、人が分析・改善する方法もあれば、設備制御まで組み込む方法もあります。
必要以上に高機能なシステムを導入するのではなく、自社の運用体制に合った機能を選ぶことが重要です。
FEMS導入の流れ|見える化して終わらせないことが重要
ステップ1:現状把握と目標設定
現在のエネルギー使用量と生産量を整理し、何をどの程度改善したいかを決めます。
ステップ2:計測対象・KPIを決める
主要設備やラインを選び、電力量、最大需要電力、エネルギー原単位など、継続して確認する指標を決めます。
ステップ3:システム・計測機器を選定する
必要な計測機器、通信方法、データ保存方法、分析・制御機能などを検討します。
既存設備との通信互換性や、工場ネットワークに接続する場合のセキュリティについても確認してください。
ステップ4:データを収集して改善策を実施する
導入直後から設備を大きく変更するのではなく、まず一定期間データを蓄積し、通常時の消費パターンを把握します。
そのうえで、運転時間・設定値・生産計画などを変更します。
ステップ5:改善前後を比較してPDCAを回す
施策を実施したら、エネルギー使用量だけでなく生産量などの条件も考慮して効果を評価します。
改善→検証→再設定を繰り返すことで、FEMSを単なる監視システムではなく、省エネ活動の基盤として活用できます。
2026年のFEMS・工場省エネは「デジタル・AI活用」がポイント
2026年3月に資源エネルギー庁が公表した「デジタル・AI技術による省エネ・生産性向上に向けた手引き」では、従来の省エネ活動だけでなく、デジタル・AIを活用した設備運用・生産プロセスの最適化が重要な取り組みとして示されています。
これからFEMSを検討する場合は、単純な電力量の見える化だけではなく、将来的に、
- 設備制御
- 生産データとの連携
- AI・モデル予測を使った制御
- 太陽光・蓄電池など分散型電源との連携
へ拡張できるかも確認ポイントになります。
一方、高機能であるほど自社に適しているとは限りません。データを活用する担当者や改善プロセスが整っていなければ、機能を十分活用できない可能性があります。
省エネ法とFEMSの関係|導入は一律の義務ではない
省エネ法では、事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上の場合、特定事業者等としてエネルギー使用状況の届出や定期報告、中長期計画などの義務が生じます。
ただし、対象事業者だからFEMSの導入が一律に義務付けられているわけではありません。
FEMSは、エネルギー使用量の把握、原単位管理、省エネ施策の検証などを効率化するための手段の一つです。
特に複数の生産設備を持ち、どこでエネルギーを消費しているのか把握しにくい工場では、データを継続的に管理する基盤として活用しやすくなります。
FEMS導入に使える補助金はある?【2026年】
EMS導入を対象に含む国の省エネ支援制度が実施されることがあります。
2026年の「省エネ・非化石転換補助金」では、(Ⅳ)エネルギー需要最適化型が設けられており、SIIが定める要件を満たしたEMSを導入してエネルギー需要の最適化を図る事業が対象となっています。
2026年版では、原油換算量ベースで2%改善を目安とする省エネ要件が示され、補助対象経費は設計費・設備費・工事費、補助率は中小企業者等が1/2以内、大企業・その他が1/3以内、上限は1事業あたり1億円とされています。
2026年10月5日時点では3次公募は9月28日で終了しており、SIIは4次公募を10月上旬から実施予定と案内しています。具体的な公募期間や条件は最新の公募情報をご確認ください。
なお、補助金があることを理由にFEMSを導入するのではなく、省エネ効果や運用方法を確認したうえで、利用できる制度があれば活用するという考え方が基本です。
太陽光発電・蓄電池を含む法人向けの制度については、法人向け太陽光発電・蓄電池の補助金検索も参考にしてください。
FEMSと太陽光発電を組み合わせるメリット
工場の電気代削減を考える場合、FEMSによる「省エネ」と、自家消費型太陽光発電による「購入電力の削減」は別のアプローチですが、データを組み合わせて考えると相性がよい施策です。
自家消費型太陽光発電では、太陽光が発電する昼間に工場でどれだけ電気を使っているかが設備容量を決める重要な材料になります。
FEMSなどで時間帯別・設備別の需要を把握できれば、
- 昼間のベース負荷
- 生産ラインごとの需要
- 休日の需要低下
- デマンドピーク
などを踏まえて太陽光設備を検討しやすくなります。
また、太陽光発電データを取り込めるシステムであれば、発電量と消費量を同じ画面で確認したり、設備構成によっては蓄電池や負荷制御と連携したりすることも可能です。
ただし、FEMSを導入すれば自動的に太陽光の自家消費率が最適化されるわけではありません。必要なデータ連携・制御機能をシステム設計時に確認してください。
工場への太陽光発電の費用や設備容量については、工場に設置する太陽光発電|費用や補助金、設置のメリット・注意点で詳しく解説しています。
自社工場に合う太陽光設備を検討する場合は、1社だけでなく複数の施工会社から、設備容量・工法・発電量シミュレーション・保証を同じ条件で比較することが重要です。
法人向け産業用太陽光発電の施工会社比較では、工場・倉庫などの条件に合う施工会社を最大3社まで無料で比較できます。
ソエルク無料見積もり依頼の流れ
申し込み
webサイトのフォームから申し込み
ヒアリング
ソエルクが電話でヒアリング(最初の確認は目安5分)
ご紹介
条件に合う会社を選び、最大3社をご紹介
お見積り
各社から直接連絡見積もり提出
FEMSを導入するときの注意点
導入しただけでは省エネにならない
FEMSは省エネを実現するための「道具」です。
グラフを見るだけで運用改善をしなければ、十分な効果は得られません。
誰がデータを確認し、異常や改善余地を見つけ、誰が設備設定を変更するのかまで運用ルールを決めておきましょう。
計測ポイントを増やしすぎない
細かな計測は有効ですが、必要以上にセンサーや計測点を増やすと初期費用・保守負担が増えます。
まず省エネ効果が期待できる主要設備から始め、必要に応じて追加する方法も検討できます。
既存設備・通信規格との接続を確認する
古い設備では通信機能を持たない場合があり、新たな計測機器や変換装置が必要になることがあります。
設備更新予定も含め、既存機器との接続方法を事前に確認してください。
サイバーセキュリティを考える
生産設備や工場ネットワークとFEMSを接続する場合、通信・アクセス権限・クラウド利用などのセキュリティ確認が必要です。
特に外部ネットワークから設備制御を行うシステムでは、IT部門・生産技術部門を交えて要件を整理しましょう。
費用対効果は工場ごとに異なる
FEMSの導入費用は、工場規模、計測点数、既存設備、クラウド・オンプレミス、制御範囲などによって大きく変わります。
「FEMSなら○%削減できる」と一律に考えるのではなく、現在のエネルギー使用状況と具体的な改善余地から費用対効果を判断することが重要です。
FEMSに関するよくある質問
Q. FEMSとBEMSの一番大きな違いは何ですか?
BEMSは主にオフィスビルや商業施設などの空調・照明・換気といった建物設備を管理します。FEMSは工場を対象とし、それらに加えて製造ラインやコンプレッサー、モーターなど生産設備のエネルギー管理まで行う点が大きな違いです。
Q. FEMSを導入すれば自動的に省エネできますか?
必ずしもそうではありません。FEMSでエネルギー使用状況を把握し、そこから運転条件・設備設定・生産方法などを改善することで省エネにつなげます。自動制御まで行えるシステムもありますが、対応機能は製品によって異なります。
Q. 中小工場でもFEMSを導入できますか?
導入できます。ただし、最初から工場全体を細かく計測する必要はありません。電力消費の大きい設備や特定ラインから計測し、効果を確認しながら対象を広げる方法もあります。
Q. FEMSは省エネ法で義務付けられていますか?
FEMSの導入そのものが一律に義務付けられているわけではありません。一定以上のエネルギーを使用する事業者には省エネ法上の報告・管理等の義務がありますが、FEMSはそのエネルギー管理や省エネ改善を行うための手段の一つです。
Q. FEMSでCO2排出量も管理できますか?
エネルギー使用量に排出係数を適用してCO2排出量を表示できるシステムもあります。ただし、すべてのFEMSがCO2算定機能を標準搭載しているわけではありません。Scope1・2などの排出量管理まで行う場合は、必要な機能や使用する排出係数を確認してください。
Q. FEMSと太陽光発電は一緒に導入する必要がありますか?
必須ではありません。FEMSだけでも工場の省エネに活用できます。ただし、自家消費型太陽光発電を導入する場合、時間帯別の電力需要を把握することで適切な設備容量を検討しやすくなります。
Q. FEMS導入に補助金は使えますか?
国や自治体がEMSを対象とした省エネ支援制度を実施する場合があります。2026年の省エネ・非化石転換補助金にもEMSを対象とする事業区分がありますが、公募時期・対象設備・省エネ要件などが定められているため、最新の公募要領を確認してください。
まとめ|FEMSは「見える化」から工場の省エネ改善につなげる仕組み
FEMSは、工場内のエネルギー使用状況を計測・見える化し、生産設備やユーティリティ設備の運用改善につなげるエネルギーマネジメントシステムです。
BEMSとの大きな違いは、建物設備だけでなく製造ラインや生産設備まで含めたエネルギー管理を行う点にあります。
重要なのはFEMSを導入すること自体ではなく、
- 何のために導入するのか
- どの設備を計測するのか
- どのKPIを改善するのか
- 誰がデータを分析して改善を実行するのか
を決めて、継続的にPDCAを回すことです。
また、自家消費型太陽光発電を検討している工場では、FEMS等で把握した時間帯別の需要データが、設備容量や自家消費率を検討する材料になります。
省エネと創エネを別々に考えるのではなく、工場全体のエネルギー使用状況を把握したうえで、自社に合う対策を選びましょう。