事業用太陽光発電は、地震という避けられない自然災害に対して脆弱な側面を持ちます。
災害時に発生する物理的な設備損壊は、売電収入の停止という直接的な経済的リスクに繋がります。
安定した事業運営のためには、発生しうるリスクを正確に把握し、事故報告の法的義務や保険といった経済的な備え、そして具体的な安全対策を講じておくことが不可欠です。
Contents
地震発生時に事業用太陽光発電で想定される4つの主要リスク
地震が発生した際、事業用太陽光発電所には多岐にわたるリスクが想定されます。
強い揺れは設備そのものに物理的なダメージを与えるだけでなく、地盤の変動を引き起こし、より深刻な事態を招く可能性があります。
また、設備の損壊は発電停止につながり、事業収益に直接的な影響を及ぼします。
ここでは、想定される主要な4つのリスクについて解説します。
パネルの破損・飛散や架台の倒壊
地震の強い揺れは、太陽光発電設備の構造に直接的なダメージを与えます。
特に、太陽光パネルのガラスが割れたり、フレームが変形したりする被害が想定されます。
また、パネルを支える架台自体が歪んだり、基礎部分から倒壊したりするリスクも存在します。
破損したパネルが強風などで飛散した場合、近隣の建物や人に被害を及ぼす二次災害の原因となる可能性も考慮しなければなりません。
地盤沈下や土砂崩れによる設備の損壊・流出
大規模な地震は、地盤そのものに深刻な影響を及ぼすことがあります。
特に、造成地や傾斜地に設置された太陽光発電所では、地盤の液状化による沈下や、土砂崩れが発生するリスクが高まります。
このような地盤変動が起きると、架台やパネルだけでなく、基礎部分を含めた設備全体が損壊したり、流出してしまったりする甚大な被害につながる恐れがあります。
一度流出すると、復旧は極めて困難です。
パワーコンディショナなど周辺機器の故障
地震の影響を受けるのは、太陽光パネルや架台だけではありません。
発電された電気を変換・制御するパワーコンディショナや、電気を集める接続箱、ケーブル類といった周辺機器も、強い揺れによって故障するリスクがあります。
特にパワーコンディショナは精密な電子部品で構成されているため、内部基盤の損傷や接続部の緩みが発生しやすいです。
これらの機器が一つでも故障すると、発電システム全体が停止してしまいます。
発電停止による売電収入の機会損失
太陽光発電設備が地震によって物理的な損害を受けると、必然的に発電は停止します。
設備の修理や交換が完了し、安全が確認されるまでの期間は、売電による収入が完全に途絶えることになります。
この売電収入の機会損失は、事業のキャッシュフローに直接的な影響を及ぼす重大な経済的リスクです。
復旧作業が長引けば長引くほど損失は拡大し、事業計画に大きな狂いを生じさせる原因となります。
過去の震災から学ぶ太陽光発電所の被害実例
過去に日本で発生した大規模な地震では、太陽光発電所も実際に多くの被害を受けています。
2018年の北海道胆振東部地震では、大規模な土砂崩れによって太陽光発電所が丸ごと流されるといった甚大な被害が発生しました。
また、揺れそのものによって架台が倒壊したり、多数の太陽光パネルが破損したりする事例も報告されています。
これらの実例は、立地選定の重要性や、耐震性を考慮した設計・施工が、いかに重要であるかを示しています。
地震による設備破損時に必須となる事故報告の義務とは
事業用太陽光発電の設備が地震によって一定規模以上の損害を受けた時、設置者は法律に基づき国への事故報告を行う義務があります。
これは電気事業法および関連法令で定められており、感電や火災といった二次災害の防止、および被害状況の正確な把握を目的としています。
この報告義務を知らずに放置してしまうと、罰則の対象となるため、オーナーは報告基準や手続きを正確に理解しておく必要があります。
報告対象となる「20%以上の破損」などの具体的な基準
事故報告の義務が生じるのは、「主要電気工作物の破損事故」に該当する場合です。
太陽光発電設備においては、具体的に「設置されているパネル面積全体の20%以上が破損した事故」が基準の一つとされています。この20%という数値は、半壊の定義(損壊の程度が工作物の20%以上70%程度)に準じたものです。
このほか、パワーコンディショナや変電設備が破損した事故、あるいは設備の破損によって感電による死傷者が出た場合や、火災が発生した場合なども報告対象となります。
被害の程度に応じて報告の要否を判断する必要があります。
事故発生から24時間以内の速報と30日以内の詳報の流れ
事故報告が必要な事態が発生した時、まず事故の発生を知った時点から24時間以内に、管轄の産業保安監督部へ電話などで速報を行う必要があります。
速報では、事故の発生日時、場所、概要などを伝えます。
その後、事故発生日から30日以内に、より詳細な原因や復旧に向けた対策などを記した詳報を、定められた様式で書面にて提出するという二段階の手続きが定められています。
報告を怠った場合に科される罰則(30万円以下の罰金など)
電気事業法で定められた事故報告の義務を正当な理由なく怠った場合、または虚偽の報告を行った場合には、罰則が科される可能性があります。
具体的には、30万円以下の罰金が課されることが法律で定められています。
これは事業者としての法的責任を問われる重大な問題であり、コンプライアンス上のリスクとなります。
設備の被害状況を正確に把握し、基準に該当する場合は速やかに手続きを行うことが重要です。
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地震による経済的損失をカバーする保険の備え
地震による設備の修繕費用や、発電停止期間中の売電収入の損失は、事業にとって大きな経済的打撃となります。
こうした経済的リスクをすべて自己資金で賄うのは困難な場合が多いため、事前の対策として保険への加入が極めて重要です。
適切な保険に加入しておくことで、万が一の際の経済的負担を大幅に軽減し、事業の早期再建を可能にします。
地震保険をはじめ、事業内容に合った補償を備えることが求められます。
火災保険では対象外?地震保険の必要性
多くの事業者が加入している火災保険ですが、その補償範囲を正しく理解しておく必要があります。
一般的に、火災保険の基本契約だけでは、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害は補償の対象外とされています。
したがって、地震による設備の倒壊や破損に備えるためには、火災保険に「地震危険補償特約」を付帯するか、別途「地震保険」に加入することが不可欠です。
この点を認識せずにいると、いざという時に補償を受けられない事態に陥ります。
発電停止期間の売電収入を補う休業損害補償
地震による損失は、設備の修繕費用といった直接的なものだけではありません。
設備が復旧するまでの間、発電が停止することで失われる売電収入は、事業の収益に深刻な影響を及ぼします。
この間接的な損害をカバーするのが、「休業損害補償」や「利益保険」です。
これらの保険に加入しておくことで、発電ができない期間の逸失利益を補填できるため、キャッシュフローの悪化を防ぎ、事業の継続性を支える重要な備えとなります。
周辺施設へ損害を与えた場合の賠償責任保険
地震によって自社の太陽光発電設備が損壊し、その結果、第三者に被害を与えてしまう可能性も考慮すべきです。
例えば、破損した太陽光パネルが飛散して隣接する建物の屋根を壊したり、通行人に怪我をさせたりした場合、法律上の損害賠償責任を負うことになります。
こうしたリスクに備えるのが「施設賠償責任保険」です。
万が一の加害事故に備え、対人・対物賠償をカバーする保険への加入も検討すべきです。
太陽光保険の加入義務とは?産業用・個人の種類や値上げ後の損害補償を解説
地震発生後、まず何をすべきか?初動対応と安全確保
地震が発生した災害時には、冷静な判断と行動が求められます。
何よりも優先すべきは、自身の安全確保です。
揺れが収まるのを待ち、身の安全を確認した上で、太陽光発電所の状況確認に移ります。
慌てて設備に近づくと、感電や部材の落下といった二次災害に巻き込まれる危険があります。
適切な初動対応と安全確保の対策を事前に理解しておくことが、被害の拡大を防ぐ鍵となります。
感電リスクを避けるための注意点と応急措置
太陽光発電設備は、地震で破損しても太陽光が当たっている限り発電を続けるため、非常に高い感電リスクを伴います。
特に、損傷したケーブルや水に濡れたパネルに触れることは極めて危険です。
むやみに設備へ近づかず、素手で触れることは絶対に避けてください。
安全が確認できる状況であれば、パワーコンディショナを停止させ、ブレーカーを遮断する応急措置が有効です。
ケーブルの損傷は火災の原因にもなるため、注意が必要です。
安全を確保した上で行う目視での被害状況チェックリスト
二次災害の危険がないことを確認した上で、まずは安全な場所から目視で被害状況をチェックします。
自身の安全を最優先し、無理は禁物です。
以下の点を中心に確認し、状況を記録しておくと、その後の専門家への連絡や保険会社への報告がスムーズになります。
太陽光パネル:割れ、ひび、脱落、大きなズレはないか
架台:変形、傾き、基礎部分のひび割れはないか
地盤:亀裂、陥没、液状化の形跡はないか
周辺機器:パワーコンディショナや接続箱に外的な損傷はないか
配線:ケーブルの断線や被覆の破れはないか
フェンス:倒壊や破損はないか
専門家による緊急点検で隠れたダメージを発見
地震発生後の初期対応として目視での確認は重要ですが、それだけでは設備の健全性を完全に判断することはできません。
外観上は問題ないように見えても、パネル内部の微細な亀裂や、接続部分の緩みなど、目に見えないダメージが潜んでいる可能性があります。
これらの隠れたダメージを放置すると、将来的な発電効率の低下や、漏電・火災といった重大な事故につながる恐れがあるため、専門家による詳細な点検が不可欠な対策となります。
外観では分からない内部クラックや接続不良の検査
専門家は、専用の測定機器を用いて、目視では発見できない内部の異常を調査します。
例えば、EL検査では、太陽光パネル内部にあるマイクロクラックと呼ばれる微細なひび割れを検出できます。
また、IVカーブ測定器を使えば、発電性能が正常かどうかを正確に診断可能です。
その他、サーモグラフィカメラによる異常発熱の確認や、トルクレンチによるボルトの緩みチェックなど、専門的な手法で隠れた不具合を特定します。
復旧作業の見積もりと修理計画の立て方
専門家による詳細な点検が完了すると、被害状況の全容が明らかになります。
その点検結果報告書に基づき、修理や交換が必要な箇所を特定し、復旧作業にかかる費用の見積もりを複数の業者から取得します。
同時に、保険会社への連絡や、必要に応じて産業保安監督部への事故報告手続きを進めます。
これらの情報と手続きを総合的に判断し、最も効率的で確実な復旧スケジュールと修理計画を立てることが、迅速な事業再開に向けた重要な対策です。
被害を最小限に抑えるための事前の地震対策
地震による被害をゼロにすることは困難ですが、事前の対策を講じることで、その規模を最小限に抑えることは可能です。
事後対応だけでなく、平時から発電所が抱えるリスクを把握し、設備や運用体制を強化しておくことが、事業の継続性を高める上で極めて重要です。
地盤のリスク評価から、設備の選定、日々のメンテナンスまで、多角的な視点での備えが、万が一の際の被害を軽減します。
ハザードマップで設置場所の地盤リスクを再確認する
太陽光発電所の被害は、設備の耐震性だけでなく、設置されている土地の地盤リスクに大きく左右されます。
各自治体が公表しているハザードマップを利用して、所有する発電所が液状化や土砂災害の危険性が高いエリアに立地していないかを確認することが重要です。
もしリスクが高いと判断される場合は、地盤改良工事や排水設備の強化など、追加の対策を検討する必要があります。
立地のリスクを正しく認識することが、効果的な防災計画の第一歩です。
耐震性に優れた架台の選定と設置工事
太陽光パネルを支える架台は、発電所全体の強度を決定づける重要な要素です。
建築基準法やJIS規格など、公的な基準を満たした耐震性の高い架台を選定することが、設備の倒壊を防ぐための基本的な対策となります。
また、どれだけ優れた架台を使用しても、それを支える基礎工事や設置工事が不適切では意味がありません。
設計通りの強度を確保するため、実績豊富で信頼できる施工業者に依頼することが不可欠です。
定期メンテナンスで設備の健全性を保つ
日々の定期的なメンテナンスは、設備の健全性を維持し、地震への耐性を高める上で重要な対策です。
メンテナンスでは、架台を固定しているボルトに緩みがないか、構造部材に腐食や劣化が生じていないか、ケーブルに損傷がないかなどを点検します。
こうした小さな不具合を平常時から発見し、補修しておくことで、地震の揺れによるダメージの拡大を防ぎます。
設備の健康状態を常に良好に保つことが、結果的に災害への備えとなるのです。
事業用太陽光発電の地震対策に関するよくある質問
ここでは、事業用太陽光発電の地震対策に関して、オーナーの方から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
法的な義務から保険の選び方まで、重要なポイントを簡潔に解説しますので、ご自身の備えを確認するための参考にしてください。
地震で太陽光発電設備が壊れた場合、どんな被害が考えられますか?
パネルの破損や架台の倒壊、地盤変動による設備流出、パワコンの故障などが考えられます。
これらにより発電が停止し、売電収入が途絶える経済的な被害も発生します。
また、破損した設備による感電や火災といった二次災害のリスクも伴います。
地震に備えるには、どのような保険に入ればよいですか?
地震による損害は火災保険の対象外となるため、別途「地震保険」への加入が必要です。
さらに、発電停止中の売電収入減少を補う「休業損害補償」や、第三者に損害を与えた場合に備える「賠償責任保険」を組み合わせることで、経済的リスクに包括的に備えられます。
設備が少しでも壊れたら事故報告は必要ですか?
全ての破損で報告が必要なわけではありません。
電気事業法に基づく電気関係報告規則では、太陽光発電設備(10kW以上50kW未満)において、感電死傷事故、電気火災事故、他者への損害事故、設備の破損により運転が停止する事故が発生した場合に報告義務が生じます。
このうち、「他の物件への損傷事故」または「電気火災事故」において、パネルや土砂が太陽光発電所の外へ出なかったとしても、設備の損傷範囲が20%を超えると報告義務の対象となります。
パワコンの破損が「設備の破損により運転が停止する事故」に該当する場合は報告義務が生じますが、破損の程度にかかわらず、運転停止に至らない軽微な破損であれば報告義務は発生しません。
基準に満たない軽微な被害であれば、法的な報告義務はありません。
まとめ
事業用太陽光発電における地震対策は、設備の物理的な損壊リスクだけでなく、売電収入の停止という経済的リスク、そして事故報告という法的リスクまで含めて総合的に考える必要があります。
オーナー自身が、ハザードマップによる立地リスクの確認や耐震性の高い設備の導入、適切な保険への加入といった事前の備えを徹底することが重要です。
さらに、地震発生後には、安全を確保した上での迅速な状況確認、専門家による点検、そして法に則った報告を遅滞なく行うことが、被害の最小化と事業の早期復旧につながります。