法人が工場・倉庫・社屋へ太陽光発電を設置するとき、確認しておきたいのが「系統連系区分」と「設備容量」の関係です。
一般的な目安として、太陽光発電では50kW未満が低圧、50kW以上が高圧として系統連系の手続きが分かれます。さらに大規模な設備では特別高圧での連系が検討されます。
ただし、法人の屋根設置では、単純に「太陽光パネルが49.9kWだから低圧」「50kWを超えたから必ず高圧」と、パネル容量だけを見て判断できるとは限りません。
確認する必要があるのは、
- 太陽光パネルの合計出力
- パワーコンディショナー(PCS)の定格出力
- 現在の建物が低圧受電か高圧受電か
- 自家消費する電力
- 余剰電力を系統へ逆潮流するか
- 蓄電池などを併設するか
などです。
この記事では、「系統連系区分はどの設備容量で判断するのか」にテーマを絞り、工場・倉庫・社屋へ太陽光発電を設置する法人向けに整理します。
系統連系そのものの意味や申請手順、逆潮流については、系統連系とは?申請の流れ・費用・逆潮流の仕組みをご覧ください。
太陽光発電の系統連系区分と設備容量の目安
太陽光発電を電力系統へ接続する場合、発電設備の規模や接続する電力系統などによって低圧・高圧・特別高圧に区分されます。
一般的な設備容量の目安は次のとおりです。
| 系統連系区分 | 設備容量の一般的な目安 | 法人で想定される例 |
|---|---|---|
| 低圧 | 50kW未満 | 小規模な事業所など |
| 高圧 | 50kW以上2,000kW未満が一般的な目安 | 工場・倉庫・商業施設・大型事業所など |
| 特別高圧 | 2,000kW以上が一般的な目安 | 非常に大規模な工場・発電設備など |
ただし、これはあくまで基本的な目安です。
実際の連系電圧・接続方法は、発電設備容量だけでなく、既存の受電方式、自家消費量、受電地点で系統へ流れる電力、周辺系統の状況などを踏まえて一般送配電事業者との協議で決まります。
特に工場・倉庫では、すでに高圧で受電している建物が多いため、この点が重要です。
50kW未満なら必ず低圧連系になるわけではない
「50kW未満=低圧」という区分は、低圧系統へ接続する一般的な太陽光発電では分かりやすい目安です。
しかし、法人の自家消費型太陽光発電では例外があります。
例えば、すでに高圧受電している工場や倉庫の構内へ50kW未満の太陽光発電設備を設置する場合です。
高圧受電している事業場に10kW以上50kW未満の太陽光発電設備を設置して自家消費する場合、経済産業省は、その太陽光発電設備についても事業場に付随する自家用電気工作物として扱うとしています。
つまり、
「太陽光設備が50kW未満だから、家庭や小規模事業所と同じ低圧案件になる」
とは限りません。
法人案件では、太陽光発電設備の容量だけでなく、現在その建物がどの電圧で受電しているかも施工会社へ伝える必要があります。
高圧受電の仕組みについては、高圧受電とは?契約電力・基本料金の仕組みで詳しく解説しています。
系統連系区分を考えるとき「パネル容量」と「PCS容量」のどちらを見る?
この点は、太陽光発電で特に混同されやすいポイントです。
例えば、
- ・太陽光パネル合計:55kW
- ・パワーコンディショナー:49.9kW
という設備を考えた場合、「55kWだから50kW以上なのか」「PCSが49.9kWだから50kW未満なのか」と疑問になるでしょう。
ここで注意したいのが、何の制度について設備出力を判断しているのかによって、確認方法が異なることです。
FIT・FIPの発電出力はパネルとPCSの小さい方が基本
資源エネルギー庁では、太陽光発電設備のFIT・FIPに関する発電出力について、基本的に太陽光パネルの合計出力とパワーコンディショナーの出力のうち、小さい方を申請する考え方を示しています。
PCSを複数設置している場合は、それぞれの系列について、
パネル合計出力とPCS出力の小さい方を選び、それらを合計
して発電出力を算出します。
そのため、パネル容量をPCS容量より大きくする、いわゆる過積載を行っている設備では、パネルの合計容量と申請上の発電出力が一致しない場合があります。
電気事業法上の設備出力は考え方が異なる
一方、電気事業法上の太陽電池発電設備の出力は、原則として太陽電池モジュールの合計出力で判断します。
ただし、太陽電池モジュールとPCSの間に蓄電池など電気を消費・貯蔵する設備を接続しない場合は、PCSの出力で判断できるとされています。
このため、
「パワコンが49.9kWなら、すべての制度で49.9kW扱いになる」
という理解は正確ではありません。
「設備容量」という言葉は何を指しているか確認する
太陽光発電の見積書や申請書では、「容量」「出力」という言葉が複数の意味で使われます。
法人担当者は、次の数字を分けて確認すると整理しやすくなります。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 太陽光パネル容量 | 設置するモジュールの公称最大出力を合計した容量 |
| PCS容量 | パワーコンディショナーが交流側へ出力できる定格出力 |
| 申請上の発電出力 | FIT・FIPや電気保安など、対象となる制度の算定ルールで求める出力 |
| 受電地点で系統へ流れる電力 | 自家消費を差し引いたうえで、受電地点から系統側へ流れる電力 |
特に自家消費型では、太陽光発電設備の出力と、系統へ実際に逆潮流する電力が同じとは限りません。
そのため施工会社から提案を受ける際には、単に「○○kWの太陽光です」と聞くだけでなく、そのkWがパネル容量なのか、PCS容量なのか、申請上の発電出力なのかを確認すると誤解を防げます。
10kWと50kWは「同じ区分の境目」ではない
太陽光発電では「10kW」と「50kW」の両方が制度上よく登場するため、混同されることがあります。
しかし、それぞれ意味が異なります。
10kWは電気保安上の区分にも関係する
2023年3月20日以降、太陽電池発電設備のうち10kW以上50kW未満は、一定の場合に「小規模事業用電気工作物」として扱われます。
技術基準適合維持義務、基礎情報の届出、使用前自己確認などの対象となります。
ただし、高圧受電する事業場に設置する場合などは、自家用電気工作物として扱われるケースがあります。
50kWは低圧・高圧を考える代表的な境目
系統連系では、一般に50kW未満を低圧、50kW以上を高圧として申込手続きが分かれています。
資源エネルギー庁も、低圧50kW未満と高圧50kW以上で系統接続の手続きを分けて案内しています。
したがって、
10kW=低圧と高圧の境目ではありません。
「FITの区分」「電気事業法上の区分」「系統連系区分」をそれぞれ分けて理解することが重要です。
2,000kW以上なら必ず特別高圧?
一般的には、2,000kW以上の発電設備では特別高圧での系統連系が検討されます。
ただし、自家消費型の大規模設備では、発電設備そのものの容量だけでなく、受電地点から系統側へ流れる最大電力も関係します。
また、一般送配電事業者は、設備規模、既存系統の状況、連系地点などを踏まえて接続方法・連系電圧を検討します。
そのため、特別高圧を含む大規模案件では「設備容量だけで連系区分を自己判断する」のではなく、早い段階で施工会社や一般送配電事業者と確認する必要があります。
自家消費型太陽光では系統連系区分をどう考える?
ソエルクが主に扱う工場・倉庫・社屋の屋根設置では、発電した電気を建物内で利用する自家消費型太陽光発電が中心です。
自家消費型でも、電力系統と電気的に接続して並列運転する設備であれば、系統連系に関する確認が必要です。
特に施工会社へ見積もりを依頼する際は、次の情報を伝えると計画を整理しやすくなります。
- ・現在の受電方式(低圧・高圧・特別高圧)
- ・太陽光パネルの予定容量
- ・PCSの予定容量
- ・余剰売電を行うか、逆潮流なしとするか
- ・蓄電池を併設するか
- ・現在の単線結線図や受変電設備の資料
これらをもとに、施工会社が既存受変電設備との接続方法や必要な申請を検討します。
「49.9kWにすれば低圧で済む」と容量だけで決めない
以前の産業用太陽光発電では、50kW未満に設備容量を抑えることで低圧連系とし、設備費や管理負担を抑えるという考え方がよく見られました。
しかし現在の法人自家消費型太陽光では、「49.9kWにすること」自体を目的に設備容量を決めるべきではありません。
例えば高圧受電している工場では、太陽光設備が50kW未満でも既存の高圧設備との関係を考える必要があります。
また、自家消費型では、
- 昼間の電力需要
- 屋根に設置できる容量
- PCS構成
- 既存キュービクル・受変電設備
- 余剰電力の扱い
などを含めて、適正容量を決めることが重要です。
系統連系区分だけを理由に設備容量を小さくし、本来削減できる購入電力まで減らせなくなっては、自家消費設備として合理的とは限りません。
法人の見積もりでは「何kWで連系する提案なのか」まで比較する
工場・倉庫の太陽光発電では、同じ屋根でも施工会社によって設備構成が異なる場合があります。
例えば、パネル容量を大きくしてPCS容量を抑える提案や、自家消費量を踏まえて設備容量そのものを調整する提案などです。
見積書を比較するときは、価格だけでなく、
- ・パネル容量
- ・PCS容量
- ・申請上の発電出力
- ・想定する系統連系区分
- ・現在の受電設備との接続方法
- ・逆潮流の有無
まで確認しましょう。
法人向け産業用太陽光発電の施工会社比較では、工場・倉庫・社屋などの条件に合う施工会社を最大3社まで無料で比較できます。
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系統連系区分と設備容量に関するよくある質問
Q. 太陽光発電は何kWから高圧連系になりますか?
一般的には50kW未満が低圧、50kW以上が高圧の区分として扱われます。ただし、既に高圧受電している工場などへ太陽光発電を設置する場合は、50kW未満でも既存の高圧設備との関係を含めて判断する必要があります。
Q. パネル55kW・パワコン49.9kWなら低圧ですか?
容量だけから一律には判断できません。FIT・FIPの発電出力ではパネルとPCSの小さい方を基本に算出しますが、電気事業法上の設備出力や実際の系統連系区分は、設備構成、既存の受電方式、蓄電池の有無なども関係します。施工会社と一般送配電事業者へ確認してください。
Q. 高圧受電の工場に30kWの太陽光を載せれば低圧設備になりますか?
必ずしもそうではありません。高圧受電している事業場へ10kW以上50kW未満の太陽光設備を設置する場合、設備は事業場に付随する自家用電気工作物として扱われる場合があります。既存の受変電設備を含めた設計が必要です。
Q. FITの「10kW以上」と系統連系の「50kW以上」は同じ区分ですか?
いいえ。10kWと50kWでは関係する制度・意味が異なります。10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は、一定の場合に小規模事業用電気工作物となります。一方、50kWは低圧・高圧の系統連系を考える代表的な境目です。
Q. 自家消費だけで売電しなくても系統連系の確認は必要ですか?
電力系統と電気的に接続して並列運転する場合は、余剰売電をしない設備でも系統連系に関する確認が必要です。必要な保護装置・申請等は設備構成によって異なります。
Q. 系統連系区分は施工会社によって変わりますか?
制度上の基準そのものが施工会社によって変わるわけではありません。ただし、パネル・PCSの容量構成、自家消費の設計、逆潮流の有無など提案内容が異なれば、申請内容が変わる場合があります。同じ条件で複数社の設備構成を比較すると判断しやすくなります。
まとめ|系統連系区分は「パワコンのkWだけ」では判断しない
太陽光発電の系統連系では、一般に50kW未満が低圧、50kW以上が高圧という区分が一つの基準になります。
ただし、法人の屋根設置では、パネル容量だけ、あるいはPCS容量だけを見て最終的な系統連系区分を判断することはできません。
FIT・FIP上の発電出力、電気事業法上の設備出力、一般送配電事業者との系統連系では、それぞれ確認する内容が異なります。
特に工場・倉庫では、現在の受電方式・パネル容量・PCS容量・自家消費量・逆潮流・蓄電池の有無をまとめて施工会社へ伝えることが重要です。
見積もりを比較するときも、「太陽光○○kW」という数字だけでなく、何の容量を示しているのか、どの連系区分を前提にした設計なのかまで確認しましょう。