- ・ZEBの基本的な仕組みと、光熱費削減や企業価値向上につながるメリット
- ・ZEBの4つの達成基準と、省エネ・創エネによる実現アプローチ
- ・工場や倉庫を新築する際に太陽光発電を設計段階から検討すべき理由
- ・導入時の初期投資と、負担を軽減する補助金制度の活用法
ZEBとは?法人が知っておきたい基本
ZEB(ゼブ)とは、「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で、快適な室内環境を保ちながら、省エネによって建物で使うエネルギーを減らし、太陽光発電などによる創エネも組み合わせて、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指す建築物です。
オフィスビルだけでなく、工場・倉庫・社屋などの非住宅建築物も対象になります。
ソエルクを利用する法人にとって、ZEBは単なる環境用語ではありません。特に工場・倉庫・社屋の新築や建て替えを予定している場合は、建物の設計段階から省エネ設備と屋根上太陽光発電を一緒に検討できるという点が重要です。
建物が完成してから太陽光発電を追加することもできますが、設計段階から検討しておけば、屋根の耐荷重、パネルを配置できる面積、トップライトや室外機など屋根上設備との位置関係、配線経路などをあらかじめ考慮できます。
一方、ZEBを目指すからといって、必ずすべての建物で大量の太陽光パネルを設置しなければならないわけではありません。まず建物自体のエネルギー消費量を省エネによって削減し、そのうえで目指すZEBの段階や建物条件に応じて創エネ設備を検討します。
この記事では、ZEBの4段階やBELSによる評価、省エネ・創エネの考え方に加え、工場・倉庫・社屋で太陽光発電を設計段階から検討する際のポイントも法人向けに解説します。
ZEHとの相違点
ZEBと非常によく似た概念に、ZEH(ゼッチ)という言葉があります。ZEHは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)」の略称であり、建築物全体のエネルギー収支をゼロに近づけるという基本的な考え方はZEBと共通しています。しかし、両者の最大の違いは対象となる建築物の種類です。ZEBがオフィスビルや工場、学校、病院といった業務用の建築物を対象とするのに対し、ZEHは戸建住宅や集合住宅などの居住用建築物を対象としています。いわば、ZEBの住宅版がZEHであると捉えるのが分かりやすいでしょう。
どちらも省エネ性能を高める設備と、太陽光発電などの創エネ設備を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味でゼロにすることを目指します。国が定める基準においても、ZEBに「Nearly ZEB」や「ZEB Ready」などの段階があるように、ZEHにも「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」や「Nearly ZEH」といった達成レベルに応じた細かな基準が設けられています。
このように、ZEBとZEHの違いは主に「非住宅」か「住宅」かという点に集約されます。どちらも2050年のカーボンニュートラル実現に向けた重要な施策であり、日本の建築業界における省エネ基準の柱となっています。事業者が自社ビルなどの建設計画を立てる際には、住宅向けのZEHではなく、業務部門の基準であるZEBの要件を確認する必要があります。
ZEBの背景
ZEBが注目されるようになった背景には、地球温暖化対策に向けた世界的な潮流と日本政府による強力な方針決定があります。2020年、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。この目標を達成するためには、エネルギー消費の多くを占める産業部門や業務部門での抜本的な対策が避けられません。
実際に、日本のエネルギー消費統計を見ると、オフィスビルや商業施設などの業務部門が占める割合は依然として高く、この分野での省エネ化がカーボンニュートラル実現の鍵を握っています。こうした状況を受け、政府は「地球温暖化対策計画」において、2030年度までに新築される建築物でZEB基準の水準を確保すること、さらに2050年にはストック(既存建築物)の平均でZEB基準の水準を目指すという意欲的な目標を掲げました。
加えて、近年の異常気象による災害の激甚化や、エネルギー価格の高騰といった社会情勢の変化もZEB普及の後押しとなっています。企業にとって環境負荷の低減は、単なる社会貢献ではなく、持続可能な経営を行うための必須課題となりました。ZEBは、環境保護と経済性の両立を実現する具体的な解決策として、現在の建築業界において最重要視されているのです。
政府は、2030年度以降に新築される建築物について、ZEB基準の水準の省エネ性能を確保することを目指しています。ここでいう「ZEB基準の水準」は、再生可能エネルギーによる創エネを除いた省エネ性能を指します。新築・建て替えを計画する法人にとって、省エネ性能は将来を見据えて検討しておきたい設計条件の一つです。
新築・建て替えなら設計段階から太陽光発電を考える
工場・倉庫・社屋を新しく建てる場合は、建物完成後ではなく基本設計・設備設計の段階から太陽光発電を検討する方法があります。
特に確認しておきたいのは次のような項目です。
- 屋根の耐荷重:太陽光パネルや架台を設置することを前提に構造を検討できるか
- 屋根の有効面積:トップライト・空調設備・排煙設備などを避けて、どの程度パネルを配置できるか
- 屋根形状・方位:使用する屋根材や勾配に適した施工方法を選べるか
- メンテナンス動線:屋根や設備の点検・改修に必要なスペースを確保できるか
- 電気設備・配線:パワーコンディショナーや受変電設備への配線をどのように計画するか
- 将来の設備増設:空調設備などを後から屋根へ設置する可能性がないか
既存建物では、完成している構造や設備配置に合わせて太陽光発電を設計します。一方、新築なら太陽光発電を前提として建築側と設備側を調整できるため、検討できる選択肢が広がります。
屋根への荷重や設置可否については、太陽光発電を屋根へ設置するときの負担・耐荷重で詳しく解説しています。
屋根面積から設置容量を考える場合は、太陽光発電の設置面積と発電量も参考にしてください。
まだ建物が稼働しておらず、電気代が分からない場合は?
新築予定の建物では、当然ながら過去の検針票や電気料金データがありません。
この場合でも、建物用途、延床面積、予定している生産・空調設備、操業時間、屋根図面などの計画情報をもとに、設計段階でエネルギー消費量や太陽光発電の概算を検討できる場合があります。
ただし、建物が実際に稼働したあとの電力使用量は、生産量や設備の使い方、操業時間などによって変わります。そのため、既存工場の実測データを使う場合と同じ精度で自家消費量を確定できるわけではありません。
新築案件では、建築・設備計画を施工会社へ共有し、複数の設備容量やパネル配置を比較しながら検討するとよいでしょう。
ZEBを実現するメリット
光熱費の節約
ZEBを導入する最大の直接的なメリットは、運用における光熱費の大幅な削減です。ZEBは建物全体のエネルギー収支をゼロに近づけることを目的としており、高断熱材や高効率な空調・照明設備を導入する「省エネ」と、太陽光発電などでエネルギーを創り出す「創エネ」を組み合わせます。
具体的には、一般的なオフィスビルと比較して、一次エネルギー消費量を50パーセント以上削減した上で、消費した分のエネルギーを自社の発電設備で賄います。これにより、外部の電力会社やガス会社から購入するエネルギー量を最小限に抑えることが可能です。例えば、環境省の公表データによれば、ZEB化を実現した施設の中には、年間のエネルギー削減率が創エネを含めて100パーセントを超え、実質的な光熱費負担がほぼゼロ、あるいは売電収入によって収支がプラスになる事例も報告されています。
昨今の世界的な社会情勢によるエネルギー価格の高騰は、企業の経営を圧迫する大きなリスク要因となっていますが、ZEB化された建物であれば外部環境の変化に左右されにくい安定した経営基盤を構築できます。初期投資は必要ですが、長期的な視点で見れば、毎月の固定費である光熱費を劇的に抑えられるため、非常に高いコストパフォーマンスを発揮します。
なお、ZEBの評価は一次エネルギー消費量の設計値を基準に行われるため、ZEBを達成したから実際の電気料金が必ずゼロになるという意味ではありません。実際の光熱費は、建物の使われ方や電気・ガスの料金、設備運用などによって変わります。
企業ブランドの向上
ZEBを導入することは、地球環境に配慮した持続可能な経営姿勢を社外へ強力に発信する手段となります。近年、世界的にカーボンニュートラルへの関心が高まる中で、自社ビルや施設をZEB化する取り組みは、単なる光熱費削減に留まらない大きな付加価値を生み出します。
特に注目すべきは、ESG投資家からの高い評価です。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉であり、現代の投資判断においてこれらの要素は欠かせない指標となっています。環境負荷を最小限に抑えるZEBの達成は、企業の長期的な生存戦略やリスク管理能力の証明と見なされるため、資金調達の機会を広げる強力な武器となります。
また、ZEBの認証を得ることで、SDGs(持続可能な開発目標)への具体的な貢献をデータとして公表できるようになります。こうした裏付けのある環境経営は、取引先や顧客からの信頼獲得に直結し、競合他社との差別化や優秀な人材の確保にも良い影響を与えます。実際に、環境意識の高い企業として認知されることで、ブランド価値が大幅に向上した事例も少なくありません。ZEBの実現は、社会的な責任を果たす先進的な企業であることを証明し、中長期的な成長を支える重要な基盤となります。
快適性の向上
ZEBを導入する大きな利点は、消費エネルギーの削減だけでなく、建物内で働く人や利用する人の快適性が飛躍的に向上する点にあります。ZEB化の核となる断熱性能の強化や、遮熱性能を備えた外皮(外壁や窓など)の導入は、室内の熱環境を安定させるために極めて有効です。
具体的な技術例として、高性能な断熱材やLow-E複層ガラスを用いた外皮断熱が挙げられます。これらの技術により、夏場は屋外からの強い日射熱を遮り、冬場は室内の暖かな空気が逃げるのを防ぎます。その結果、外気温の影響を受けにくい魔法瓶のような空間が形成され、一年中過ごしやすい室温を維持できます。
また、ZEBは窓際の温度差を解消する効果もあります。従来の建物では、冬場に窓際が冷え込むコールドドラフト現象が起きがちでしたが、開口部の断熱性を高めることで足元の冷えが改善されます。実際にZEB化を行った宿泊施設の事例では、改修前は窓際が寒いという利用者の不満がありましたが、複層ガラスの導入後は快適性が向上したというデータも報告されています。このように、ZEBはエネルギー効率の追求と、ストレスのない上質な室内環境の構築を同時に達成する優れた手法といえます。
不動産価値の向上
近年、SDGsへの取り組みや2050年のカーボンニュートラル実現に向けた動きが加速する中で、ZEBの達成は不動産としての価値を大きく高める要因となっています。ZEB化されたビルは、脱炭素社会の実現に直接貢献する先進的な物件として評価され、環境意識の高い企業からの入居需要が非常に高いのが特徴です。
不動産評価の視点では、ZEB認証の取得は建物の省エネ性能を客観的に証明する強力なエビデンスとなります。これにより、将来的な法規制の強化やエネルギー価格の高騰といったリスクに対して強い耐性を持つ「将来性の高い資産」とみなされます。実際に、環境性能に優れたビルは一般的なビルに比べて賃料水準が高く設定される傾向にあり、空室率の低下にもつながるため、安定した収益性が見込めます。
また、既存ビルの改修においてZEB化を行うことも有効です。外皮の断熱改修や高効率な空調設備への更新、LED照明の導入といった汎用的な技術を組み合わせることで、築年数が経過した物件であっても、新築ビルに劣らない快適性と環境性能を付与できます。このように、ZEB化による資産価値の向上は、投資家やオーナーにとって中長期的な競争力を維持するための極めて合理的な戦略といえます。
ZEBとBCP・停電対策の関係
ZEB化によって建物のエネルギー消費量を抑えておくことは、非常時に必要となるエネルギーを少なくするという点でBCP対策にもつながります。
また、太陽光発電や蓄電池を組み合わせ、停電時にも使用できる自立運転・切替設備などを適切に設計すれば、非常時の電源として活用できる場合があります。
ただし、ZEBであること自体が「停電時にも建物へ電力を供給できる」という意味ではありません。一般的な系統連系型の太陽光発電は停電時に停止するため、BCP用途まで考える場合は、停電時にどの設備へ電力を供給するかを含めた設備設計が必要です。
ZEB実現の注意点
ZEB実現のためにはいくつか注意点が存在します。
専門知識が必要
ZEBの実現には、建築物省エネ法やエネルギー収支の計算に関する高度な専門知識が必須となります。一般的なビル建設とは異なり、ZEBは建物全体のエネルギー消費量を実質的にゼロにすることを目指すため、設計の初期段階から緻密なシミュレーションを行う必要があるからです。
具体的には、外壁や窓の断熱性能を向上させるパッシブ技術と、高効率な空調や照明を導入するアクティブ技術を最適に組み合わせなければなりません。さらに、太陽光発電などの創エネ設備を連動させ、年間の一次エネルギー消費量を正確に算出する作業が求められます。これらの工程は専門性が高く、自社のみで計画を完遂させるのは非常に難易度が高いのが実情です。
また、ZEBの公的な認証を受ける際にも、複雑な申請手続きや基準の理解が必要になります。ZEBの達成を確実なものにするためには、ZEBプランナーなどの専門家に相談することが推奨されます。ZEBプランナーは、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に登録された、ZEBの設計やコンサルティングのノウハウを持つ専門家です。計画段階から専門的な知見を取り入れることで、補助金の申請要件を満たしつつ、実効性の高い省エネ建築を実現できます。
初期投資が必要
ZEBの実現には、一般的な建築物と比較して高い初期投資が必要となります。主な要因は、エネルギー消費を最小限に抑えるための高性能な省エネ設備と、エネルギーを自ら創り出すための創エネ設備の導入です。
具体的には、建物の断熱性を高めるための高性能断熱材やLow-E複層ガラス、消費電力を大幅に削減するLED照明、さらには効率の良い空調システムなどの導入費用が挙げられます。これに加え、太陽光発電パネルや蓄電池といった創エネ機器の設置費用も加わるため、建築コストは通常よりも高くなる傾向にあります。
しかし、これらの投資は中長期的な視点で見ると、経営上の大きな利点に変わります。ZEB化した建物は運用段階での光熱費を劇的に削減できるため、数年から十数年のスパンで初期投資の増分を回収することが可能です。また、エネルギー価格が高騰するリスクに対しても強い耐性を持つことができます。
さらに、国や自治体が実施している補助金制度を賢く活用することで、導入時の金銭的負担を大幅に軽減できます。初期コストの高さだけを見るのではなく、長期的な維持管理費の削減効果や資産価値の向上、そして公的な支援策を含めた総合的な収支シミュレーションを行うことが、ZEB化を成功させる鍵となります。
ZEBには4つの段階がある
ZEBには、省エネ・創エネによる一次エネルギー消費量の削減状況に応じて、『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4段階があります。
| 区分 | 主な基準 |
|---|---|
| 『ZEB』 | 再生可能エネルギーを除いて基準一次エネルギー消費量から50%以上削減し、再生可能エネルギーを含めて100%以上削減 |
| Nearly ZEB | 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減し、再生可能エネルギーを含めて75%以上100%未満削減 |
| ZEB Ready | 再生可能エネルギーを除いて50%以上削減 |
| ZEB Oriented | 延べ面積10,000㎡以上の建築物などを対象とし、工場・事務所・学校等は再生可能エネルギーを除いて40%以上、ホテル・病院・百貨店・飲食店・集会所等は30%以上削減するなどの要件を満たす |
『ZEB』とNearly ZEBでは創エネが評価に大きく関係するため、屋根上の太陽光発電は代表的な選択肢の一つです。
一方、ZEB Readyは創エネを除いた省エネ性能で評価されます。そのため、太陽光発電を設置しなければZEB Readyを達成できないというわけではありません。
まず省エネによって建物のエネルギー需要を減らし、その後、目指すZEBランクや屋根条件に合わせて太陽光発電などの創エネ設備を検討するという順番が基本です。
ZEBを実現するには
ZEBを実現するには省エネ設備の導入、創エネ設備の導入、BEMSの導入、ZEBプランナーの利用などが求められます。それぞれ説明していきます。
省エネ技術
ZEBを実現するために欠かせない省エネ技術は、建物の設計工夫でエネルギー消費を抑えるパッシブ技術と、最新設備で効率化を図るアクティブ技術の2軸で構成されます。
パッシブ技術は、建物の外皮性能を高めることで、冷暖房などのエネルギー需要そのものを削減する手法です。具体例として、高性能な断熱材の充填やLow-E複層ガラスの採用による外断熱・遮熱が挙げられます。これにより、夏の日射熱を遮り冬の室温低下を防ぐ魔法瓶のような構造を実現します。また、自然光を取り込む昼光利用や自然換気を設計に組み込むことで、照明や換気ファンへの依存度を物理的に下げることが可能です。
一方のアクティブ技術は、消費するエネルギーを能動的に制御し、無駄を削ぎ落とす手法を指します。オフィスビルの一次エネルギー消費において約4割から5割という大きな割合を占める空調設備については、高効率なヒートポンプや変風量制御の導入が極めて効果的です。さらに、全館のLED照明化に加え、人の動きを察知する人感センサーや外光に合わせて明るさを調整する調光制御を組み合わせることで、電力消費を最小限に抑えます。これらの技術を統合し、建物の特性に合わせて最適化することがZEB達成の第一歩となります。
創エネ技術
ZEBを実現するために省エネ技術と並んで不可欠な要素が、エネルギーを自ら生み出す創エネ技術です。ZEBの定義である一次エネルギー消費量の正味ゼロを達成するには、建物内で使用する電力を可能な限り再生可能エネルギーで補う必要があります。
代表的な創エネ手法としては、屋上や壁面を活用した太陽光発電システムの導入が最も一般的です。太陽光発電は都市部のビルでも設置しやすく、近年のパネル性能向上により限られた面積でも効率的な発電が可能です。このほか、地域の特性に応じて地熱利用やバイオマス発電、小規模な風力発電などを組み合わせるケースもあります。
特に注目されているのが、初期費用を抑えて導入できるPPA(電力販売契約)モデルの活用です。これは第三者が所有する発電設備を自社ビルに設置し、発電された電力を購入する仕組みで、メンテナンス負担を軽減しつつZEB化を推進できるため、多くの企業で導入が進んでいます。
こうした創エネ設備を導入することは、日常的な電気代の削減に直結するだけでなく、蓄電池と組み合わせることで災害時の非常用電源としても機能します。省エネによって建物全体の消費エネルギーを最小化し、その不足分を創エネによって賄うという両輪の取り組みこそが、ZEB達成への確実なステップとなります。
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ZEBプランナーへ相談する
ZEB化には建築・設備・エネルギー計算など専門的な検討が必要になるため、ZEBに対応した設計者やコンサルタントへ相談する方法があります。
SIIでは、ZEBの設計やコンサルティング業務を行う事業者を「ZEBプランナー」として登録・公表しています。
すべてのZEB建築物についてZEBプランナーへの依頼が法律上必須というわけではありませんが、SIIが実施するZEB実証事業など、制度によってZEBプランナーの関与が要件となる場合があります。補助事業を利用する場合は、その年度の公募要領を確認してください。
改修でもZEB達成は可能?
既存のビルを対象とした改修によってZEBを達成することは、決して不可能ではありません。むしろ、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、国内に膨大に存在する既存ストックの省エネ化は、新築時以上の急務となっています。
改修における大きな特徴は、必ずしも未普及の先進技術を導入する必要がないという点です。実際にZEB認証を受けた改修事例の多くでは、高効率な空調システムへの更新、全館LED照明の採用、窓への複層ガラス導入や外壁の断熱強化といった、既に確立された汎用的な技術が組み合わされています。こうした技術を適切に適用することで、築年数が経過した建物であっても、一次エネルギー消費量を大幅に削減し、ZEB Ready以上の基準を満たすことが可能です。
また、既存ビルの改修は一括で行う必要はなく、設備の更新時期に合わせた段階的な実施も検討できます。ただし、改修によるZEB化には、現状のエネルギー使用状況の正確な把握と、構造上の制約を考慮した緻密な設計が不可欠です。
補助金を活用する場合や、確実な省エネ効果を得るためには、計画段階から専門的な知見を持つZEBプランナーへ相談することが重要となります。改修を通じて快適性や資産価値を高めることは、ビルのオーナーにとっても長期的な経営基盤の強化につながります。
ZEBの第三者評価はBELSで確認できる
ZEBの省エネルギー性能を第三者から評価してもらう方法として、BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)があります。
BELSは建築物の設計上の省エネルギー性能を第三者評価する制度で、評価機関による審査を経て評価書・ラベル等が発行されます。
ZEBの要件を満たしている場合は、BELSのラベル等に『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedといった達成状況を表示できます。
そのため、「まずBEI0.5以下のBELS認証を取得し、その後別にZEB認証を申請する」という一律の二段階手続きとして考えるのではなく、建物の用途・規模と一次エネルギー消費性能を評価し、該当するZEB区分を第三者評価で確認すると理解すると分かりやすいでしょう。
ZEBに利用できる補助制度【2026年度】
ZEB化については、国が設備導入や計画策定を支援する事業を実施しています。
2026年度(令和8年度)には、SIIが「ZEB実証事業」と「ZEB化診断・計画策定支援事業」を実施しています。
令和8年度 ZEB実証事業
省エネルギー設備やWEBPROで評価されていない技術などを活用したZEB化を支援する事業です。
2026年度は一次・二次・三次公募が行われ、三次公募は2026年9月18日から10月9日17時まででした。2026年10月13日時点では受付を終了しています。
対象となる建物・設備、補助率、ZEBプランナーの関与などには細かな要件があるため、次年度を含め利用を検討する場合はSIIの最新公募要領を確認してください。
ZEB化診断・計画策定支援事業
既存建築物などを対象に、ZEB化に向けた診断と計画策定を支援する制度です。
2026年度の公募期間は、2026年6月26日から10月16日17時までと案内されています。ただし、予算状況によって早期に終了する可能性があります。
なお、この制度は診断だけを行う申請ではなく、ZEB化に向けた計画策定まで行うことが要件となっています。
補助制度は年度ごとに名称・対象・公募期間が変わるため、「補助金があるからZEB化する」のではなく、建物計画として必要な省エネ・創エネを整理し、利用可能な制度があれば活用するという順番で考えるのがおすすめです。
ZEB事例紹介
最後に実際に環境省のZEBポータルから、ZEBを達成した事例についていくつか紹介したいと思います。
| 建物名 | 久光製薬ミュージアム(久光製薬株式会社) |
|---|---|
| ZEBランク | ZEB |
| 建築物概要 | 都道府県(地域区分):佐賀県 新築/既築:新築 延床面積:687.63㎡ 建物用途:事務所等 一次エネ削減率(創エネ除く/含む):65% / 103% |
| ZEB化のキッカケ | 創業170周年を記念した事業、自社の理念と環境への取り組みをアピール |
| 解決のポイント | ガラスを多用したデザインと全面Low-Eガラスを用いた熱負荷の軽減によって妥協のないZEBを実現 |
| 利用者の感想 | ガラスを多用した建物ながら夏場でも快適 |
出典:環境省(一部抜粋)
新築ZEB事例| 建物名 | 柏崎海洋センター シーユース雷音(柏崎市) |
|---|---|
| ZEBランク | ZEB Ready |
| 建築物概要 | 都道府県(地域区分):新潟県 新築/既築:既築 延床面積:2,949㎡ 建物用途:ホテル等 一次エネ削減率(創エネ除く/含む):51% / 51% |
| ZEB化のキッカケ | 市の方針に沿うモデルとなる公共施設を探していたところ、設備更新時期を迎えた本施設が合致、エネルギーコストの削減とCO2排出削減 |
| 解決のポイント | 熱源・給湯・昇温システムとしてコージェネレーション、空冷ヒートポンプ、吸収式冷温水機を導入 |
| 利用者の感想 | 改修前は、窓際は寒いという利用者の声があったが、複層ガラスの導入により改善した |
出典:環境省(一部抜粋)
改修ZEB事例ZEBを検討する法人が太陽光発電で確認したいこと
ZEB計画のうち、省エネ設備やBELS評価については建築設計・設備設計を担う専門家との検討が中心になります。
一方、屋根上の太陽光発電については、施工会社によって提案できるパネル配置、設備容量、工法、発電量シミュレーション、見積金額などが異なる場合があります。
特に新築・建て替えの場合は、次の情報があると検討を進めやすくなります。
- 建物の所在地
- 建物用途(工場・倉庫・社屋など)
- 屋根図面・配置図
- 予定している屋根材・屋根形状
- 操業時間や予定している設備
- 太陽光発電を設置したい目的
まだ建物が完成しておらず電気料金の実績がない場合でも、計画情報をもとに検討を始められる場合があります。ただし、実際の電力使用量が確定していないため、完成済み施設と同じ精度で自家消費率を確定できるとは限りません。
そのため新築案件では、設計段階で複数社からパネル配置・設備容量・費用の考え方を比較し、建築設計へ反映できる内容があるか確認すると進めやすくなります。
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ZEBに関するよくある質問
Q. 新築の工場・倉庫をZEBにしたい場合、太陽光発電はいつ検討すればよいですか?
可能であれば建物の設計段階から検討するのがおすすめです。屋根の耐荷重、屋根上設備との配置、配線経路、メンテナンススペースなどを建築設計と合わせて考えやすくなります。ただし、ZEB Readyのように太陽光発電などの創エネを除いた省エネ性能で評価される区分もあります。
Q. まだ建物が完成しておらず電気代が分かりません。太陽光発電の概算はできますか?
建物用途、延床面積、予定設備、操業時間、屋根図面などの計画情報をもとに、概算を検討できる場合があります。ただし、実際の使用電力量がまだないため、稼働済み建物と同じ精度で自家消費量を確定できるわけではありません。施工会社へ計画資料を共有して複数案を比較するとよいでしょう。
Q. ZEBにするには必ず太陽光発電が必要ですか?
目指す区分によります。『ZEB』やNearly ZEBでは再生可能エネルギーを含めた削減量が評価されますが、ZEB Readyは創エネを除いた省エネルギー性能で評価されます。
Q. ZEBなら停電しても太陽光発電を使えますか?
ZEBであることだけでは、停電時に電力を使用できるとは限りません。停電時に太陽光発電を使うには、自立運転に対応した設備や切替設備、必要に応じて蓄電池などを設計する必要があります。
Q. ZEBと太陽光発電の施工会社は同じ会社へ依頼する必要がありますか?
必ずしも同じ会社である必要はありません。ZEB全体の設計・エネルギー計算は建築設計者やZEBプランナー等が担当し、太陽光発電については専門の施工会社が設計・施工を担うケースもあります。重要なのは、建築・設備・太陽光の各計画を早い段階で共有することです。
まとめ
ZEBを検討する際は、省エネ性能だけでなく、建物の屋根をどのように創エネへ活用するかも一つの検討ポイントです。
特に新築・建て替えでは、建物が完成してから太陽光発電を考えるのではなく、設計段階で施工条件と設備容量を確認しておくことで、建築計画と合わせて検討しやすくなります。