営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)において、発電を優先して営農がおろそかになる不適切な事例が増加したことを受け、2024年4月1日から農地法に基づく設置基準が厳格化されました。
この改正は、優良農地の確保と食料の安定供給を目的としており、農業経営の継続をより強く求める内容となっています。
具体的には、収穫量確保の基準明確化、罰則の強化、申請・更新手続きの要件追加などが盛り込まれました。
農水省が営農型太陽光発電のルールを見直し
農林水産省は、営農型太陽光発電における不適切な事案の増加に対応するため、農地の一時転用許可基準を見直しました。
発電事業が主目的となり、営農が形式的に行われるケースを防ぐことが狙いです。
このため、農水省は2024年4月1日に農地法施行規則を改正・施行し、これまで通知で運用されてきたルールを法制化しました。
これにより、営農と発電の両立という本来あるべき姿を確保するための、より明確で強制力のある基準が定められました。
収穫量8割確保の基準をパネル下だけでなく区域全体に適用
改正された基準では、作物の収穫量に関する要件がより厳格になりました。
従来は太陽光パネル下の農地に限定して、その地域の平均的な収穫量(単収)の8割以上を確保することが求められていました。
しかし新ルールでは、この基準が一時転用許可を受けた区域全体に適用されます。
これにより、一部の栽培しやすい場所だけで基準をクリアするのではなく、事業区域全体で安定した営農を行い、継続的に十分な収穫量を確保することが必須となりました。
発電が主目的となる形骸化した営農の防止を徹底
今回のルール厳格化は、発電事業者の都合で営農が名目的に行われる「形骸化」を防止する点に重きを置いています。
そのため、許可申請時には、栽培作物の選定理由や具体的な作業計画、収支見込みなどを詳細に記した営農計画書の提出が義務付けられました。
農業委員会はこれらの書類を基に、計画の実現可能性や営農の継続性を厳しく審査します。
あくまで農業が主であり、発電は従であるという原則が徹底されることになります。
発電設備による遮光率を原則30%未満に
農林水産省が新たに定めた指針では、営農型太陽光発電において作物の生育に必要な日照量を確保するため、設備による遮光率を原則30パーセント未満に抑えるよう求めています。これは、太陽光パネルが農地を過度に覆うことで光合成が妨げられ、収穫量の減少や品質低下を招く事態を防ぐための措置です。
特に水稲などの光を多く必要とする品目において、この数値が重要な基準として位置づけられました。事業者は、パネルの配置や間隔を工夫することで、農業生産に支障が出ない設計を維持しなければなりません。発電効率のみを重視した過密なパネル設置は認められず、農業と発電の両立を物理的な側面からも担保する仕組みです。
太陽光パネルは地上から3メートル以上の高さに設置
営農型発電における設備構造の基準についても、厳格な運用が求められています。支柱を立ててパネルを設置する際は、トラクターなどの大型農機が支障なく稼働できるよう、パネルの最下部を地上から3メートル以上の高さに確保することが推奨されています。
これは、太陽光設備が農業の機械化や効率化を妨げないようにするための配慮です。パネルが低すぎると、農作業の利便性が著しく低下し、結果として営農の継続が困難になる懸念があります。
また、支柱の配置についても、農機の旋回スペースや作業効率を十分に考慮した設計にしなければなりません。発電効率だけを追求するのではなく、将来にわたって円滑な農業経営を維持できる物理的な環境を整えることが、許可を得るための重要な要件となります。
不適切な運営に対する罰則や行政指導を強化
新たな制度では、ルールを遵守しない不適切な事業者に対する罰則や行政指導が大幅に強化されました。
これまで是正指導に留まることが多かったケースでも、今後はより厳しい措置が講じられます。
例えば、定められた収穫量基準を達成できない、あるいは営農を放棄するなどの違反が確認された太陽光発電事業に対しては、FIT/FIP交付金の停止や許可の取り消しといった、事業継続そのものを揺るがすペナルティが科される可能性があります。
基準未達の設備にはFIT交付金の一時停止措置も
農地法違反など不適切な運営が確認された場合、経済産業省と連携し、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)やFIP制度にもとづく交付金が一時的に停止される措置が導入されました。
これは売電による収益が途絶えることを意味し、事業者にとって極めて大きな打撃となります。
実際に、2024年4月の改正法施行後、営農が適切に継続されていないと判断された複数の事業者に対し、この交付金停止措置が適用されています。
悪質な場合は一時転用許可の取り消しと原状回復命令へ
農業委員会からの是正指導に従わないなど、違反が悪質であると判断された場合には、最も重い処分が下されます。
具体的には、農地の一時転用許可そのものが取り消され、事業の継続が不可能になります。
さらに、許可の取り消しに伴い、設置した太陽光パネルをはじめとする発電設備の全てを撤去し、農地を元の状態に戻す「原状回復命令」が出されることもあります。
これにより、事業者は投じた資本を回収できなくなるリスクを負います。
毎年の営農状況の報告が法的義務に
従来、農業委員会への営農状況の報告は努力義務とされていましたが、今回の改正によって法的な義務となりました。
事業者は毎年、作物の収穫量や栽培状況などを記した報告書を提出しなければなりません。
農水省および農業委員会は、この報告内容を基に事業の継続性を厳格に審査し、営農がおろそかになっていないかを確認します。
報告を怠ったり、虚偽の報告を行ったりした場合には、是正指導の対象となります。
電気代削減額を10秒で試算する
法人社屋
📊 補助金・税制で回収期間を大幅に短縮できます
即時償却の節税効果は実効税率30%で試算。詳細は税理士にご確認ください。
低圧・高圧・特別高圧、契約種別に関わらず全て対応しています。
新規申請および更新手続きで求められる要件
基準の厳格化に伴い、営農型太陽光発電の新規設置や一時転用許可の更新手続きで求められる要件も追加されました。
これまでは事業計画の提出が中心でしたが、今後は営農の実現性や継続性を客観的に証明する資料が必須となります。
安易な新規参入が難しくなると同時に、すでに事業を運営している既存の事業者も、3年または10年の許可更新時に、新しい基準に適合しているかを厳しく審査されることになります。
詳細な営農計画書や専門家の意見書の提出が必須に
新規申請や更新の際には、農業経営改善計画書の提出が求められます。この計画書には、経営規模の拡大目標、生産方式の合理化目標、経営管理の合理化目標、農業従事の様態等に関する改善目標を記載することが求められます。
10年間の長期許可は対象農地や担い手の条件が明確化
営農型太陽光発電の一時転用許可期間は原則3年ですが、営農の適切な継続が見込まれる場合など、特定の条件を満たす場合には最長10年間の許可が可能です。
令和6年4月1日より、この一時転用許可の基準等が農地法施行規則に定められ、ガイドラインも制定されました。
これにより、10年許可を取得するための要件がより明確化されました。
具体的には、担い手が自ら所有する農地や賃借権等の権利を有する農地等を利用する場合、遊休農地を再生利用する場合(再許可時を除く)、または第2種農地・第3種農地を利用する場合などが、10年許可の対象となります。
なお、再許可時には、当初遊休農地であった場合でも、その時点で遊休農地でなければ許可期間は3年以内となることに留意が必要です。