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ESG経営とは?ESG経営のメリットと投資を受ける方法を解説!-産業用太陽光発電の一括見積もりサイト

SDG’Sや環境問題への貢献

ESGとは

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった単語で、文字通り、環境と社会、ガバナンスに配慮した企業の新しい判断基準となります。持続可能な社会を目指すためには、企業としての利益拡大だけでなく、環境問題や社会問題そして社内のガバナンスに配慮していくことが重要で、企業の長期的な利益にもつながります。ESGはそのための一つの指標でもあります。

E=環境

ESGのEとは環境問題に配慮した取り組みを指します。温室効果ガスの削減や、産業廃棄物の低減、絶滅の危機に瀕している動物の保護といった活動が、環境に配慮しているとされます。企業のできる具体的な施策としては、太陽光・風力・水力など再生可能エネルギーの導入、建物・事業所の省エネ化、グリーン調達の実行、廃棄物の削減などが挙げられます。また、環境証書の購入も環境への配慮として扱われます。

S=社会

ESGのSとは、社会的な課題に配慮することを指します。具体的には、人権問題や労働条件、多様性に関する課題が挙げられます。例えば、人権問題である、児童労働、強制労働などの問題は先進国である日本では起こりづらいかもしれませんが、サプライチェーンが海外にある場合などは注意が必要な問題となります。

また、会社の働き方を整え、ワークライフバランスを整えることも労働条件への配慮として企業ができる取り組みの一つとなります。多様性ある人材の採用や働きやすい社内環境の構築も社会問題への配慮となります。

G=ガバナンス

ESGのGとは、監視・統制による企業統治の仕組みづくりであるコーポレートガバナンスのことを指します。つまり、企業が健全に運営されるために、管理体制を強化したり、不正や不祥事を防ぐための仕組みづくり、株主への説明責任を果たすこと</span>などが挙げられます。コーポレートガバナンスを徹底することは企業価値の向上や、投資家からの信頼性の向上につながります。

ESG経営が注目される背景

ESGが注目されている背景としては環境問題や社会問題への関心の高まりがあります。近年、地球温暖化はますます進行を続けています。世界の平均気温はここ100年で0.74度上昇し、海水面は過去100年で17cm上昇しており、このままだと温暖化による影響で地球環境に深刻な影響が及ぶと予想されております。

企業による単純な利益追求だけでは、環境に大きなダメージを与えてしまうことから近年では、企業活動でも環境に対する配慮が求められるようになりました。特にSDGsが2015年に国連のサミットで採択されてからその流れは加速しました。SDGsとは持続可能な社会を実現するために設定された国際目標です。目標の中には地球環境に関する問題だけではなく、ジェンダーや多様性など社会問題に関する目標やアジェンダも多くありました。

ESG経営は、環境問題や社会問題を重視する世界的な潮流を背景に注目されるようになっていきました。

ESG経営を実行するメリット

企業にとってESG経営を取り組むメリットを見ていきます。

ESG投資を受ける可能性がある

ESG経営を続ければ、ESGに対する取り組みを評価するESG投資家から高評価を受けて資金を獲得できるチャンスが増えます。ESGの観点から企業の持続性や社会的責任も考慮して投資を行うことをESG投資と言います。ESG経営を続ければESG投資家から、ESG投資を受けるチャンスが増え、企業のキャッシュフロー増加につながります

企業ブランドの向上

ESGにコミットして環境に配慮した活動を企業として実行することで環境問題に関心の高い顧客の購買層の興味関心を引ける可能性が高まります。また、環境問題への対策は、通常業務に加えて実行する必要があり、太陽光発電の導入、省エネビルの設計などは場合によっては最新技術や専門的な知識が必要なため、取り組みを実行できているというだけで企業のイメージが向上する可能性があります。

労働環境の改善

ガバナンスを強化することで、従業員の働きやすい環境が整備できます。これにより、企業の生産性の向上や社員の離職率の低下、優秀な人材の確保が期待できます。また、ガバナンスの不備などによる予期せぬ問題を防ぎリスクを低減できます。

ESG投資とは

ESG投資とは、投資家がESGの観点で評価した企業に対して投資を行うことです。ESGが注目を集めるようになった背景には、2006年に国連で採択されたPRIが影響しています。PRIは投資判断にESGの3要素を取り入れることを推進した原則です。

ESG投資の手法

世界のESG投資額の統計を集計している国際団体ではESG投資を実行する際の判断手法を分類しています。どのような判断基準があるか紹介します。

ポジティブスクリーニング

ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から評価が高い会社を積極的に選定する投資手法です。ポジティブスクリーニングで投資先を選定する際は、企業が開示するESG情報や非財務情報(年次レポート、ウェブサイトの情報など)を参照して決定します。

ネガティブスクリーニング

ポジティブスクリーニングとは対照的に、特定の社会的・環境的基準を満たさない企業を投資対象から除外する手法のことです。これは、たばこ、アルコール、ギャンブル、武器製造といった特定の業種を避ける手法のものです。

ESGインテグレーション

投資判断において従来の財務情報に加えて、ESG(環境・社会・ガバナンス)要因を体系的かつい明示的に取り入れ企業を分析・評価する指標です。これによって中長期的な企業価値への影響を考慮し、より精度の高い意思決定を行うことができます。

国際規範スクリーニング

国連グローバルコンパクト(UNGC)や国際労働機関(ILO)などの国際的な規範を基準に、環境問題、人権、労働基準に違反する企業を投資対象から排除する手法のことです。環境破壊や人権侵害にかかわる企業への投資を避けることでリスクを低減する目的があります。

サスティナビリティ・テーマ投資

サスティナビリティテーマ投資とは、気候変動、水質改善、森林保護、エネルギー効率の向上、男女共同参画など、ESGの特定のテーマを投資のアイディアとする投資手法のことです。特定テーマに絞って投資することで、持続可能な会社を発掘する目的やイノーベーションの誘発を期待して実行されます。

コミュニティ投資

社会的・環境的にポジティブなインパクトをもたらすことを意図する投資であるインパクト投資の一つで、コミュニティ投資は地域社会の活性化を目的とする投資です。融資を受けづらい低所得者層や地域社会に根差した中小企業に資金供給することで地域社会の開発や課題解決を目指します。

議決権行使

株主が株主総会で決議に参加して、特定の事案に対して賛否を投票することです。投資家が投資先企業に向けて行う目的を持った対話のことであるエンゲージメントに含まれる行為です。ESG投資の手法としても使われていて、ESGガイドラインに従った委任状による議決権行使がこれに含まれます。

ESGの主な評価機関

企業がどれだけESGに取り組んでいるかを示す指標にESG ランキングが存在します。ESGランキングは各種評価機関が企業につけたESGスコアもとにランキング付けしたものです。統一の評価基準はなく、世界各国に複数の評価機関が存在します。

S&P Global

S&P Globalは米国を拠点にする世界的に有名な金融サービス企業で、毎年世界の大手会社を対象にS&PグローバルESGスコアを発表しています。経済、環境。社会の3つの側面から企業の持続可能性を評価する制度で、各分野で上位15%の企業を上位10%、上位5%、上位1%の区分に選定してランク付けしています。

bloomberg

bloomberg(ブルームバーグ)はビジネス情報や金融データ、ニュース、市場分析の提供をしてきた世界的にも有名な情報インフラ企業です。ブルームバーグは禁輸データだけでなく、企業のESG情報も、ESGデータベースとして公開しています。ESGデータベースはブルームバーグの情報網を活かして、市場の自家総額のうち94%をカバーする広範囲で、厳密に管理された信頼できるデータを提供しています。

ブルームバーグのESGスコアは企業が業績に影響を与えるESGリスクと機会にどのぐらいさらされているか、その管理をどのように実行しているか客観的に評価したものです。

MSCI

モルガンスタンレーキャピタルインターナショナル(MSCI)はニューヨークに拠点を置く、株価指数の算出や、ポートフォリオ分析など幅広いサービス業を提供している、世界的な金融サービス企業です。MSCIはESG格付けを行っていて、格付けはAAAからCCCまでのグローバルな7段階のスケールに基づきます。各企業は、環境や社会に関連する33項目のキーイシューのうち2から7項目を選定して評価するシステムになっています。

CDP

CDPは2000年にロンドンで設立した非営利団体で、気候変動への取り組みを促す国際的な枠組みです。企業や自治体の活動による環境への影響を開示することが主な活動で、開示された情報をもとに年1回、各企業や自治体に対して質問書を送り、その回答からCDPスコアを発表しています。CDPスコアは「A」から「D-」の8段階で評価されます。

格付投資情報センター(R&I)

格付け投資情報センターは1975年に日本経済新聞社が創設した機関がもとになっている日本で最も歴史がある信用格付け機関です。国、自治体、企業の信用力を評価し、信用格付けを行っております。ESGファイナンス評価サービスも実施していて、企業のESGへの取り組みを国際的なガイドラインに照らし合わせて評価しています。

ESG経営を実現する方法

ESG経営を実現する具体的な手法についていくつか紹介します。

再生可能エネルギーの導入・エネルギー削減

太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギーを取り入れることは、二酸化炭素排出量の削減に直結し、ESG経営として評価されます。また、施設の導入費など初期費用は掛かりますが、長期的に見れば電気代の節約になるのでコストカットが期待できます。また、資源のロスを削減も同様にコストカットに繋がります。

具体的な方法としては、社内のペーパーレス化、梱包物のダウンサイジング、分別を徹底して廃棄物のリサイクル率を高める、エネルギーマネジメントシステムを導入して建物内の使用電力を省エネするといった施策が挙げられます。

ガバナンスの強化

コンプライアンス教育を徹底して、企業のガバナンスを強化しましょう。企業の統制力を上げれば、不正を未然に防ぐことでリスクを低減できます。また、情報開示を積極的に行い株主に対する信頼性を上げましょう。ウェブサイトや報告書でESG情報を明確に開示し企業の透明性を上げることはESG評価の向上につながります。

働きやすい環境づくり

多様性に配慮しすべての人が働きやすい環境を整えることも、ESGの観点で評価を受けるために必要なことです。具体的な行動としては、女性管理職比率向上の目標設定や育児休暇の推進、障碍者雇用の促進が挙げられます。

国内企業の事例

国内企業のESG経営やサスティナビリティを目指した取り組みについて紹介していきます。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は2025年のESGブランド調査で首位にランクインした、環境意識が高い会社です。2015年トヨタは環境チャレンジ2050を発表しました。これは、気候変動、資源枯渇、生物多様性の損失といった地球環境の問題に対して、車の持つマイナスの影響をなるべく減らすとともに、社会にプラスをもたらすことを目指して設定された6つの目標のことです。

例えば目標の1つである新車CO2ゼロチャレンジでは、EV、HEV、PHEV、FCEVといった電動車のラインナップを拡充し開発を加速させたり、大容量で効率のいい電池や水素などを使った車両の研究開発を行うことで、2050年に新車からのCO2排出量の実質ゼロを目指しています。

エーザイ株式会社

エーザイの企業理念は「hhc (human health care)(人々の健康と生活を支える)」であり、この理念のもと「医療アクセスの拡充」「環境・社会・ガバナンス (ESG) を含む持続可能な社会への貢献」を重要な使命として位置づけています。具体的にはRE100に参加し、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目標として」掲げています。またこのような環境活動を価値創造レポートや環境報告などで積極的に報告しています。

イオン株式会社

イオン株式会社アグループ横断でサスティナビリティへの取り組みを実行しています。イオン株式会社は資源の再生のため、日本・中国・マレーシアなどでの植樹活動を行っています。また資源の削減のためプラスチックレジ袋の提供を終了し紙袋を販売する取り組みを実施しています。

ESG経営の課題

ESG経営を実現するにはいくつかの課題が存在します。順番に見ていきましょう。

統一の評価基準が存在しない

ESG経営を実行するには特定の指標を使って、自社の取り組みを評価してもらい外部へのアピールをする必要があります。しかし、ESGスコアには統一の指標がなく、S&PやCDPなど様々な指標がります。よってESG経営に取り組む際は、各指標の仕組みと効果を十分に理解し検討してから選択する必要があります。

短期的な成果は得ずらい

ESG経営へのコミットは中長期的に見れば、キャッシュフローの強化、企業ブランドの向上、新たなビジネスチャンスの創出などメリットも大きいですが、短期的なメリットに直接結びつくものではありません。再生可能エネルギーの導入や、企業のガバナンスの強化は、専門的な知識やノウハウが必要で、中長期に渡り継続して実行していく必要があります。成果が数値として確認できるようにあるまで時間が必要なことに留意が必要でしょう。

RE100とは?

RE100とは企業が事業で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーで、調達することを目指す国際的なイニシアチブです。2015年に採択されたパリ協定やSDGsによって近年ますます環境問題への意識が高まっております。RE100の参加企業数は2025年3月現在、世界全体で400社を超えており、日本だけでも約100社ほどの企業が参加しています。このような環境意識の高まりからRE100は企業の環境対策の中でも中心的な取り組みとなっております。

RE100に取り組むわけ

RE100は再生可能エネルギーの普及を促し、企業活動による環境負荷の低減を目指して設立された国際的なイニシアチブです。世界の平均気温はここ100年で0.74度上昇し、近年ますますその傾向は加速しております。また海水面は過去100年で17cm上昇しており、近い未来温暖化による環境の変化で水害の増加や健康被害など様々な悪影響が起きることが予測できます。

このように地球温暖化は早急に対処すべき問題であり、RE100のようなイニシアチブは環境対策への意識を広く普及することが期待されています。例えば、影響力の大きい企業が脱炭素に取り組む姿勢を世界に向けてアピールすることは他企業の取り組みを誘発し、環境対策を加速させることを狙えます。また、多くの企業が環境対策に取り組むことで、脱炭素需要や投資、イノベーションを引き起こすことで、市場に好循環のサイクルを生み出す効果も期待できます。

RE100に参加するメリット

企業がRE100のイニシアチブに参加し環境保全活動に取り組むことは、単に社会的責任であるというだけでなく様々な経済的メリットが存在します。

化石燃料の変動リスクへの対応

化石燃料は紛争や気候問題によって価格が変動するなどの問題が実際に起きています。一方で、再生可能エネルギーはFIT制度という国が一定期間固定価格で買い取ってくれる制度があり、こちらを利用すれば変動リスクを回避することができます。企業がRE100に取り組むため再生可能エネルギーの調達に取り組むことは、化石燃料の価格変動リスクを一定期間回避できるといえるでしょう。

電気代の削減

近年コロナ禍やウクライナ問題によって、電気料金が高騰しています。再生可能エネルギーを使用して発電した電力は自家消費が可能なのでその分だけ電気代を節約できます。また、RE100の普及により再エネ市場の規模が拡大すれば価格低下につながり、安定した再エネ供給を受けることができます。

コミュニケーションの機会が生まれる

RE100に参加し、再生エネルギー100%調達の活動にコミットすることは、世界的なアピールになり世界中の企業と繫がる可能性を生み出します。世界中の企業と繫がる機会が生まれることで、情報交換や新たな再エネ供給企業と出会う可能性もあるのでメリットが大きいといえます。

対外評価の向上

前述したしたようにRE100に参加することは対外アピールになり企業のブランドイメージを向上させます。また、再エネの導入比率はCDPからの加点対象にもなります。CDPとは企業や自治体に対し、気候変動、水資源、森林に関する影響の情報開示を求める非営利目的の国際組織です。温暖化に対しても温室効果ガスの排出量で質問所を作成して、企業を評価しています。

CDPは環境問題に対する取り組みが特に優秀な企業を「Aリスト」として選定しております。CDPからの「Aリスト」評価はESG投資の呼び込みにも貢献します。ESG投資とは環境、社会、ガバナンスの3つの要素を考慮して投資を行うことで、RE100への取り組みは環境や社会への配慮が高いとしてESG投資の対象になる可能性があります。

RE100の参加要件

RE100に参加する条件は年間消費電力量が100Gwh以上の企業であることです。ただし、特例として日本企業の場合は50Gwh以上に緩和されております。年間電力消費量50GWhとは、一般世帯の年間電力消費量の約8000倍以上の非常に大きな電力消費量となります。この条件を満たすのは日本でも一部大企業や自治体だけとなります。

ただし、電力消費量が50GWH未満の場合でも、以下の特徴を1つでも有している倍は例外的に加盟できる可能性があります。

参加要件 RE100事務局が重視している地域における主要な事業者であること
• RE100事務局が重視している業種における主要な事業者であること
• RE100事務局が重視している地域において政策提言に参加する意思
があること
• グローバルまたは国内で認知度・信頼度が高い
• 主要な多国籍企業(フォーチュン1000又はそれに相当)
• その他、RE100の目的に利する国際的・地域的な影響力を持つこと

また、RE100は再エネ設備メーカーや金融機関の場合は参加するにあたっていくつか満たさなくてはならない条件があります。

再エネ設備メーカーの場合以下全てを満たす必要があります。

参加要件 • 年間消費電力量が100GWh以上であること
• 主要事業が再エネ設備メーカーであること
• 再エネ発電所建設・運営、再エネ電力小売、再エネ関連のコンサルティ
ング・法務サービス提供等を行っている場合には、それらからの収入の合
計が売上の50%以下であること
• ゴールドメンバーで参加すること

金融機関の場合は以下の全てを満たす必要があります。

参加要件 自社ポートフォリオの気候変動への影響を測定し開示すること
※可能な限り早い段階で行うこと
• 石炭火力及び一般炭採掘に関与する事業や企業への資金供給を段
階的に停止すること※先進国は2030年まで、途上国は2040年まで
• 化石燃料に関連する事業や企業に多額の投資を行っていないこと

化石燃料、航空、軍需品、ギャンブル、たばこ、といった業種だけを取り扱っている会社はRE100に参加できません。また、主な収入源が発電事業の企業もRE100には参加できません。

RE100の参加条件を満たさない企業や自治体の場合でも、同じく事業における再エネ使用率100%を目指す「再エネ 100宣言 RE Action」という日本独自の枠組みに参加することができます。RE100と同じく毎年進捗報告を上げる必要があり、参加を表明することでロゴをホームページや名刺に使用する音ができるので、ブランド力の向上を期待できます。一部の大企業しか参加要件を満たせないRE100と違って、中小企業でも参加しやすい枠組みになっております。

RE100参加企業の義務

RE100参加企業は目標年を宣言し、事業全体を通じて再エネ使用率100%にコミットしなくてはなりません。加えて、目標年の設定には2040年までの再エネ使用率100%、2030年までに70%、2035年までに90%の中間目標の設定という要件を満たさなくてはなりません。また、RE100に加盟する場合はグループ企業全体で加入することが原則です。

RE100に参加する場合は毎年、所定のフォーマットで進捗報告を行う必要があります。進捗報告では、RE100の主目標である再エネ100%をどう達成するかのロードマップや、電力消費量をどれだけ削減し、どれだけ再エネを購入してきたかという実績を報告する義務が生じます。ただし、設定した目標を達成できなかった場合でも特にペナルティはありません。ただし、目標に対する進捗は毎年CDPを通じて公開されますので、目標未達が続くと企業の社会的信用に影響が出る可能性があります。

RE100参加企業の実際の取り組み

RE100参加企業が2050年の再エネ使用率100%達成のためにどのような取り組みを行っているのか実際の事例を紹介いたします。

株式会社リコー

株式会社リコーは日本企業として初めてRE100に参加した企業です。企業の目標としては2030年に自社の温室効果ガス排出量を2015年度比で63%削減し、再エネ比率100%を目指しています。またリコーグループでは拠点の省エネ化や電力の見える化を行っており、前漢でのLED設置や岐阜支社は省エネ+太陽光発電の導入により、「Nearly ZEB(年間のエネルギー消費量を再生可能エネルギーの発電量も含め、75%以上省エネを達成した建物)」の認証を受けています。

出典:リコージャパン

https://jp.ricoh.com/release/2025/0605_1

イオン株式会社

イオン株式会社では2030年にはCO2排出量35%削減、店舗で排出する温室効果ガスを2050年までに総量でゼロにするという目標を掲げRE100に参加しております。そのために太陽光発電施設などを小型店舗、大型店舗、海外店舗を含めて太陽光発電施設を導入しています。イオン株式会社は太陽光発電施設の自社での導入だけでなく、PPA方式での再エネ施設導入を行っております。

PPAとは初期費用0円、メンテナンスフリーで太陽光発電施設など、再エネ施設を導入できる方式のことです。その代わり、太陽光発電施設は事業者の所有部となり、毎月使用した電力を事業者に支払います。また、イオン株式会社はEV100にも加盟しており全国の146モールにEV充電器を設置するなどEVの充電インフラの整備を実行しています。

出典:イオン株式会社

https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/09_TakahiroSuzuki_Aeon.pdf

ソニー株式会社

ソニーグループは日本、米国、中国の事業所で再エネ導入を拡大し、米国についてはグローバル目標よりも前倒しの2030年に再エネ比率100%の達成を目指しております。2030年以降は日本でさらに導入を加速させ、2040年にグループ全体で再エネ使用率100%を目指します。ソニーでは太陽光発電の導入の他に、グリーン電力証書の購入を再エネ調達の方法として行っております。

「グリーン電力証書」は2001年にソニーが電力会社と共同開発した仕組みで発電設備を直接導入しなくても再エネを利用しているものとして扱うことのできる、環境証書の一つです。

出典:ソニー株式会社

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/csr/library/highlight/2019.html

再生可能エネルギーを調達するには?

RE100の目標達成のために再生可能エネルギーを調達するには太陽光発電の導入がおすすめです。太陽光発電の導入は企業にとってRE100の目標達成やCDPへの報告以外にも様々なメリットがあります。

電気代を節約できる

太陽光発電を導入し発電した電力を自家消費すれば、電気代を削減することができます。特に2025年現在、電気代は高騰していく傾向にあるので経済的メリットはますます大きくなっているといえます。また、自家消費した電力の余りは売電することで収入を得ることもできます。

BCP対策になる

太陽光発電は蓄電池を併用して電力を貯めておくことで、災害時の非常用電源として利用することが可能です。蓄えた電力を使って、業務への早期復帰や地域の避難所として貢献することが可能になります。

節税になる

太陽光発電は固定資産として減価償却が可能です。償却年数は17年で毎年の減価償却費を経費とできるので、法人税や所得税を節約することができます。また、太陽光発電には税制優遇制度が適用できる倍があり、例えば、中小企業投資促進税制などを適用すれば設備導入費全額をその年の経費に即時償却できる場合があります。

太陽光発電を手軽に調達する方法

太陽光発電を導入すると聞くと、高額な初期費用、設置後の定期的なメンテナンスなどあまり手軽なイメージはないかもしれません。近年では、PPAモデルという初期費用0円で手軽に太陽光発電を設置し、メンテナンスの必要もない導入方法が存在します。

PPAとは

PPAモデルとは、「Power Purchase Agreement」 の略称で、太陽光発電施設で発電した電力を販売したい事業者と購入したい需要家の間で電力購入契約を結ぶことを指します。設置した太陽光発電は一定の契約期間の間、事業者の所有物ですが、その代わりに太陽光パネルやパワコンなどの設備購入費、設置工事費、メンテナンス費などの負担はすべて、PPA事業者側が負担します。

需要家側は一定の契約期間の間、毎月PPA事業者から太陽光発電で発電した電力を購入し続ける必要があります。ただし、PPA事業者から購入する電力は一般的な買電契約で購入する電力と比べてかなり安く、経済的にはメリットがあるといえます。契約期間は一般的に10~20年であることが多く、契約期間終了後は譲渡されることもあります。

PPAモデルの中にも、敷地内に設置面積を確保できない場合でも太陽光発電を導入できるオフサイトPPAと、発電した太陽光エネネルギーのうち、環境価値だけを導入する代わりに地理的制約にとらわれないバーチャルPPAが存在します。

オフサイトPPAは企業の敷地外に太陽光発電を設置してそこから電力を供給してもらうPPAモデルです。一般送配電事業者の電力網を利用して電力を供給するため託送料金がかかり電力の単価は敷地内に設置するPPAよりも高くなりますが、自社に太陽光発電設備を置けるスペースがない場合でも太陽光発電を利用することができます。

バーチャルPPAは、電力を直接購入するのではなく、再生可能エネルギー由来の環境価値を購入するPPAモデルのことです。購入した環境価値はCDPやRE100への報告において調達した再生可能エネルギー量として使用可能です。ただし、電力の直接供給はないので経済的なメリットは他の方式に比べて低いです。

BEMSとは?

BEMSとは(Building Energy Management System)の略で、建物全体のエネルギー使用量を一元管理し、自動で制御することによって建物全体のエネルギーを効率化することができるシステムです。BEMSを導入することによって、エネルギーの「見える化」をすることができます。ええルギーの「見える化」により、不要に稼働している設備を停止させ必要な時だけ稼働させるようにして、エネルギー使用量を削減することができます

BEMSのEMSは(エナジーマネジメントシステム)という意味で、エネルギーを一元管理・制御するシステムのことを指します。このEMSは近年、様々な場所で導入されておりオフィスビルや商業ビルに導入されたEMSをBEMSと呼び、一般住宅に導入されたシステムをHEMS、工場に導入されたEMSをFEMSと呼びます。

BEMSが注目される背景

BEMSが注目されるようになってきた背景として、地球温暖化対策や電気代の高騰が挙げられます。日本では2050年までに二酸化炭素排出量ゼロを目指すカーボンニュートラルが方針として策定されました。そのため、国全体でいかにしてCO2を減らしていくのかが重要な課題となっています。BEMSによる商業施設、オフィスビルの消費エネルギー削減は政府の掲げる脱炭素社会実現に近づくために大きく貢献できるといえるでしょう。

また、電気代の高騰によるエネルギー需要の増加も原因として挙げられます。ウクライナ情勢や新型コロナウィルスの流行によって禁煙電気代が高騰しています。電気代の上昇は企業にとっても大きな負担となるので、BEMSによる省エネでコストカットする方法が注目されてきました。

BEMSを導入するメリット

BEMSを導入するメリットは大きく3つあります。

電気代の削減

BEMSを導入すればエネルギーの流れが可視化され、どの設備がどのタイミングでどれだけのエネルギーを消費しているかリアルタイムで確認することができます。使用していない部屋で空調や照明がついたままになっているなどの無駄が発見できれば、電気代の削減につながります。また、BEMSでは設備の自動制御が可能です。設備の自動制御によって電力の仕様が特に多い時間帯の消費量を調整しピークカットを行うことができます。

ピークカットとは1日のうち電力の消費量が特に多くなる「ピーク」の時間帯の電力消費量を減らすことで、月間の最大電力需要を下げることで、電気代の基本料金を下げる手法です。最大電力需要とは一定の期間に最も多くの電力を使用した値のことです。この値によって電気料金が算定されるので、低く抑えることで電気代の大幅な削減が期待できます。

快適性の向上

BEMSの自動制御機能を使えば、センサーで各区画の温度を把握し自動調整することで温度のムラ少なくすることができます。また、会議室や執務室など部屋の人数に応じて、空調や温度を調整することで、暑すぎる、寒すぎる、空気が悪いといった苦情を減らすことができます。社員や利用者の快適性が向上すれば、会社の生産力向上にもつながります。

環境問題への貢献

BEMS導入によるエネルギーの効率化で使用する電気の量を削減すれば、結果として二酸化炭素排出量を抑え地球温暖化防止につながります。BEMS導入によりエネルギーの流れを効率化し、太陽光発電のような創エネ技術も導入すればZEBの達成も期待できます。ZEBとは(ゼロ・エネルギー・ビルディング)の略で二酸化炭素排出量を再生可能エネルギーで発電した分も含めてゼロにした建物のことです。

ZEB認定を貰うことのメリットは企業ブランドの向上にあります。ZEBの達成にはBEMSを含めた高度な省エネ技術の導入や太陽光発電施設のような発電設備が不可欠です。そのため、ZEB認定を貰うことは先端技術を取り入れた企業であるというブランドイメージの向上につながります。また、ZEBに取り組むことで獲得できる補助金も存在します。

企業が主体となって二酸化炭素の排出量を削減し地球温暖化を防止することは、前述したカーボンニュートラル宣言の影響もあり企業として社会的に求められる責任といえます。また、環境への配慮は社会的責任というだけでなく、企業イメージの向上や環境保護活動への取り組みによる補助金の獲得といった経済的効果も期待できます。

BEMS導入の費用

BEMS導入の費用は中規模であれば200~300万円ほどが目安の値段となります。

例えば、脳神経リハビリ北大路病院の事例では導入費用が300万円ほどかかり、そのうち約150万円を補助金でカバーしました。導入した結果、年間170万円の電気料金を削減することに成功し、1年未満で初期費用の回収に成功しました。

出典:脳神経北大路病院

https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000204/204646/kenkyukai_siryou1.pdf

BEMSを導入する方法

BEMSを導入するには、目的を整理する、システムの要件定義を行うなどいくつかのステップを踏む必要があります。それぞれ説明していきます。

1導入目的の整理

まずは、導入目的を明確化します。電気代の削減をしたいのか、環境に配慮したESG経営を実行するためZEB認証を受けるのかなど、目的によて設計するシステムは変わってきます。その際にエネルギー診断を受けることをおすすめします。エネルギー診断とは、電気やガス、水道などの使用状況を分析する診断のことです。エネルギーの使用状況が明確化することでどこに無駄があるかを把握することができます。

無料で利用できるエネルギー診断として現在東京都では、中小規模事業者に向けて省エネルギー診断を実施しています。技術専門員が事業所に訪問して約90分ほどヒアリングや現地調査を通してエネルギーの利用状況をチェックします。

2BEMSの要件定義・設計

クラウド型にするのか、物理的なサーバーを設置するオンプレミス型にするのか、温度センサー、電力計、ガスメーターなどセンサー類をどこにどれだけ配置するのか、通信方式はどうするのか、どこの空調や照明を制御するのかなど、BEMSの設計に必要な要素を整理し、システムを設計します。

3BEMSの導入計画を立てる

BEMSの導入にかかる費用や工数を策定します。事前に導入費用の見積もりを立て、工事期間を把握し、業務に影響が出ないようにスケジュール調整しましょう。

4補助金の活用

BEMSの導入に際して、環境省や経産省、国交省から適用可能な補助金がいくつか出ています。補助金を活用して導入費用の負担を減らしましょう。

事業名 エネルギー管理システム導入促進事業費補助金(BEMS)
事業目的 本事業は、中小ビル等の高圧小口の電力需要家におけるBEMSの導入を促進し、エネルギー使用の効率化および電力需要の抑制を図ることにより無理のない節電を進め、電力消費量の削減を図ることを目的としています。
事業内容 一般社団法人環境共創イニシアチブ(以下、「SII」という)は、BEMSアグリゲータを公募により募集・登録を行い、その情報を公表しています。補助金を申請する者(以下、「補助事業者」という)は、BEMSアグリゲータからBEMSを導入し、1年以上のエネルギー管理支援サービスの契約を行う場合、一定の条件をみたすことでBEMS導入費用の一部について補助を受けることができます。
対象事業者 条件を満たす、電力会社等との契約電力が50kW以上、500kW未満の高圧小口需要家
補助金給付額 工事費1/3以内、設備費1/2以内、1/3以内
事業期間 平成24年4月から平成26年3月31日までとする

出典:一般社団法人環境共創イニシアチブ(一部抜粋)

https://sii.or.jp/bems/first.html

BEMSの導入

要件定義をもとにBEMSを導入し運用を開始しましょう。通信ネットワークを構築し、センサーやコントローラーを配置します。その後、データの収集・蓄積システムの構築をします。運用開始後、データを収集しレポートを出力することで省エネ効果を確認しましょう。

BEMSの仕組み

BEMSは主に「エネルギー情報システム」、「エネルギー制御システム」、「エネルギー管理共通基盤」の3種類のサブシステムで構成されていることが多いです。エネルギー管理共通基盤は人感知センサーや温湿度センサー、エネルギー機器などから収集したデータを蓄積するシステムです。エネルギー制御システムは空調・照明など各機器の自動制御を行うシステムです。そして、エネルギー情報システムはデータ分析を行って見えるかするシステムです。

次にBEMSを構成する装置を紹介します。BEMSは主に機器制御装置、人感知センサー、温度湿度センサー、中央監視制御装置の4つの機器で構成されています。

各フロアに配置された人感センサー、温室度センサーで感知した部屋の人数や温度・湿度といった情報を中央監視制御装置に転送します。中央監視装置は送られてきた情報をもとに部屋の空調や照明の運転が最適化されるように機器制御装置を通じて照明や空調の量を調整します。また、分析されたデータは直感的なダッシュボードやグラフで分かりやすく表示されます。

BEMSの注意点

BEMS導入時の注意点としては大きく3つあります。

初期費用がかかる

システム導入時には工事費や設備購入費などの初期費用が掛かります。ただし、BEMSは導入した時のコスト削減効果も大きく、長期的な目線で見ると建物のエネルギー使用状況にもよりますが導入することがおすすめです。BEMSを導入する前は導入後のコスト削減効果と比較検討しましょう。

セキュリティ対策が必要

BEMSもインターネット使用するシステムである以上、サイバー攻撃のリスクが伴います。セキュリティ対策はしっかりと行いましょう。

運用が煩雑

BEMSは膨大なデータを管理し解析しなければならず、従来のシステムとは管理手法が違うため、システムを正しく運用するにはある程度の経験が求められます。よって、システムの管理運用には、適切な人材の採用か既存社員の育成が必要になります。

BEMS導入事例

最後に東京都の地球温暖化防止活動推進センターが掲載している導入事例を参考に一部紹介いたします。

会社名 ライオンビジネスサービス株式会社
建物用途 事業所
導入のきっかっけ 2011年の東日本大震災を機に安全の確保と節電を目的に中長期の修繕活動に取り組む。耐震対応と同時に照明のLED化や遮光シートの導入など様々な工夫をして省エネに努めてきたが、どのぐらいの省エネ効果があるかわからずBEMSを導入した。
導入効果 管理室から室内の温度や湿度を把握して空調を間接操作することで、 快適性と省エネの両立を可能にしました。またフロア単位で使用した電力量をBEMSで把握できるようにしました
今後の取り組み 分析結果をテナント従業員に開示し、省エネ活動や修繕計画に活用する予定

出典:東京都地球温暖化防止活動推進センター(一部抜粋)

https://www.tokyo-co2down.jp/wp-content/uploads/2021/02/hp-bemsdounyujirei-azubiru.pdf

会社名 富士エレベータ
建物用途 事業所
導入のきっかっけ 冨士エレベータ―工業では、従前より極力人手にたよることのない省エネ対策につとめてきました。自社での消費電力量削減については一定の効果がありましたが、テナントに飲食店と貸会議室が入居しており、営業時間による消費電力変動幅が大きいことから、ピーク電力の抑制に課題がありました。
導入効果 BEMSを導入したことによって空調制御によるピークの抑制に成功しました。各フロアの空調を確認できるようになりいつでもCSV形式で出力できるようになりました。
今後の取り組み BEMSの導入によってテナントの節電意識が多少変化したように感じます。週↓データを分析してより一層節電に努めたいと思います
建物用途 事業所

出典:東京都地球温暖化防止活動推進センター(一部抜粋)

https://www.tokyo-co2down.jp/wp-content/uploads/2021/02/hp-fujierebetakougyodounyuujirei.pdf

ZEBとは?

Net Zero Energy Buildingの略で、年間の一次エネルギー消費量を省エネ設備や創エネ技術を使って正味ゼロにすることを目指した建物のことです。一次エネルギーとは、自然から採取できる直接のエネルギーのことです。枯渇性の、石油、石炭、天然ガスと再生可能な、太陽光、風力、水力、地熱などに分かれます。

一次エネルギーは、発電所で加工することで、電力や都市ガスなど二次エネルギーに転換されます。建物の内部では人が活動しているためエネルギーの消費量を完全に0にはできませんが、省エネ設備によりエネルギー効率を高め、太陽光発電所などを導入することにより創エネをすることで、エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロにできます。

また、似た言葉にZEH(ゼッチ)がありますがこちらは一般住宅を対象にしたものです。ZEBの対象になるのはビルや学校、工場などの建物になります。

 

ZEBの背景

2020年に政府は2050年までに、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラル宣言をしました。子のカーボンニュートラル宣言を経て、地球温暖化対策推進法の一部を改正する方法が成立し、2050年までにカーボンニュートラルを達成することが基本理念として規定されました。

カーボンニュートラルを実現するためにはビルや商業施設など業務部門で温室効果ガスの削減量を増やすことが不可欠です。このような背景もあって現在日本ではZEBの導入が推進されております。

 

ZEBを実現するメリット

光熱費の節約

高効率の省エネ設備を使ってビル内で消費するエネルギーを節約し、太陽光発電を使って消費した分のエネルギーを賄うので、外部のエネルギーに頼る必要がありま線。結果として光熱費を削減できるといえます。

企業ブランドの向上

ZEBを導入することで環境に配慮した会社として、企業イメージの向上を図れます。環境に配慮できるというブランドアピールは単純にイメージの向上というだけでなく、ESG投資家から評価され資金獲得機会の増加にもつながります。ESGとは環境、社会、ガバナンスの略で、ESGに配慮した投資を行う投資家をESG投資家と言います。

快適性の向上

ZEB達成のために導入する断熱・遮熱性能を持った外皮はエネルギー消費量を抑えながら過ごしやすい快適な空間を形成することを可能にします。例えば外皮断熱という技術を使えば、夏場は熱の侵入を防ぐことで涼しく、冬場は内部の熱を逃さないことで暖かく室内の温度を保つことが可能です。このようにZEBを導入すれば、エネルギー効率と快適性を両立した空間を設計することが可能です

不動産価値の向上

近年はSDGsやカーボンニュートラル宣言の影響からZEBの導入を検討する事業者も増えてきています。そのため、ZEBを達成したビルは脱炭素社会やSDGsに貢献できるためほかのビルと比べても需要が高いといえます。

BCP(事業継続計画)対策

ZEB達成のために導入した太陽光発電所などの発電施設は災害時の非常用電源となるため、事業の継続が可能です。またBCP以外にも災害時にも電力を供給できることで災害時の避難拠点として利用することも可能です。

 

 

ZEB実現の注意点

ZEB実現のためにはいくつか注意点が存在します。

専門知識が必要

ZEBの実現には専門的な知識が必須となります。省エネ技術や創エネ技術を用いてエネルギー使用量を実質100%にするのは難易度が高く専門知識がないと難渋することが想定されます。また、ZEBの認証を受けるには計画段階から綿密にプランを練る必要があります。ZEBの達成を本気で目指すならZEBプランナーに相談しましょう。ZEBプランナーとは後で詳しく説明しますが、ZEBの計画・設計・運用に関する専門的な知識と経験を持つ専門家のことです。

初期投資が必要

ZEBの実現には高額な高効率機器や発電施設などの創エネ機器を導入することになるので、当然建築コストは高くなります。しかし、導入した機器によって光熱費を継続して節約できるので長期的に考えれば高い費用対効果が期待できます。

 

ZEBの4段階

ZEBには達成状況によって、「ZEB(ゼブ)」「Nearly ZEB(ニアリーゼブ)」「ZEB Ready(ゼブレディ)」「ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)」の4つの段階が存在します。

ZEB 基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを除いて、50%以上を削減して、
基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを含んで、100%以上を削減した建物のことです。
Nearly ZEB 基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを除いて50%以上を削減して、
かつ基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを含んで75%以上を削減した建築物のことです。
ZEB Ready 基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを除いて、
50%以上のエネルギーを削減した建築物のことです
ZEB Oriented 基準一次エネルギー消費量から、
建物の用途ごとに決められた割合のエネルギーを削減した建物のことです。
A) 事務所等、学校等、工場等は40%以上の一次エネルギー消費量削減
B) ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30%以上の一次エネルギー消費量削減
また、さらなる省エネのために現状では未評価の技術を導入することが求められます。

ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)とは完全なZEB化が難しい大規模な建物を対象とする基準です。具体的には、小学校や病院・ホテルなど延べ面積が1万㎡以上の建物が対象となっています。エネルギー削減量の基準は事務所、学校、工場は40%以上、ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等は30%以上とされています。

ZEB ReadyとはZEB達成のための準備段階に入った建物のことを指します。太陽光発電設備などの創エネ技術を考慮せず、省エネだけで消費エネルギーの削減率が50%を超えた建物がZEB Readyとして認められます。大型建築物を除いた、ZEBを達成するための最初の段階です。

Nearly ZEBとはNearly(ほとんど)と名前につくように、あと一歩でZEBを達成できる段階に入ったビルに対して認定される基準です。省エネだけで50%以上エネルギーを削減し、再生可能エネルギーによる生産量も考慮して75%以上のエネルギーを削減しているビルがNearly ZEBとされます。

ZEBとは創エネ技術を用いてエネルギー消費量の正味ゼロを達成した建物のことです。具体的な基準は省エネで50%以上を達成し、創エネを含めて100%以上のエネルギー削減量を持つ建物がZEBとして認定されます。建物内ですべての消費エネルギーを賄うことができるので、外部からのエネルギー供給の必要がありません。

 

ZEBを実現するには

ZEBを実現するには省エネ設備の導入、創エネ設備の導入、BEMSの導入、ZEBプランナーの利用などが求められます。それぞれ説明していきます。

省エネ技術

ZEBを始めるにはまずは省エネ技術の導入が必要です。省エネ技術には大きく分けてパッシブ技術とアクティブ技術の2つに分かれています。パッシブ技術とは断熱、自然換気、昼光利用、日射遮熱など建築計画的な技術のことです。建物のエネルギー使用率を抑え、自然光を効率的に利用します。エネルギー需要そのものを減らすことで、運用コストを抑えます。

一方で、アクティブ技術とは、高効率証明、高効率空調などエネルギーを効率的に使用するための能動的な技術のことです。一般的なオフィスビルでは特にエネルギー消費量における空調システムの割合が多くを占めており、削減することによる効果は非常に高いといえます。

創エネ技術

ZEBを達成するためにもう一つ重要な技術は、創エネ技術です。創エネ技術とはエネルギーを自ら生産していく技術のことです。省エネ技術と創エネ技術を組み合わせれば、ZEBにより一層近づくことができます。創エネ技術の具体例としては太陽光発電、水力発電、バイオマス発電など再生可能エネルギーを使った発電施設が挙げられます。中でも一般的なのが太陽光発電施設の導入かと思います。近年だと、PPA契約によって初期費用0円で手軽に導入可能なのでおすすめです。

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BEMS

ZEBを達成するためにはBEMSの導入も有効です。BEMSとは(Building Energy Management System)の略で、建物内の照明や空調などの商況をリアルタイムで監視し、最適な制御を行うことでエネルギーマネジメントを効率化します。パソコン1台でエネルギーを「見える化」できるので、不要な設備の運転を抑え、必要な時のみ稼働させることで省エネが可能です。

ZEBプランナーの利用

ZEBの達成にはZEBプランナーを利用することをおすすめします。ZEBプランナーとはZEBの実現をサポートする専門家のことです。ZEBプランナーは一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)によって認定される資格を持っており、専門知識に精通しています。また、ZEBの実現に関して、建築設計、設備設計、コンサルティングを行ってきたノウハウがあります。

ZEBの達成には建物の設計段階から、エネルギー消費量の正味0を達成するために、エネルギーを効率化を考え、発電施設などの創エネ技術を導入する必要があり、高度な専門知識が必要になるので、ZEBプランナーから業務支援を受けながら綿密に計画を練ることをおすすめします。

 

改修でもZEB達成は可能?

既存ビルのZEB化はそう難しくありません。実際にZEBの建物に使われている省エネ設備も外皮断熱やLED証明、高効率空調など、汎用的な技術が多く必ずしも先進技術を導入する必要がありません。新規建築物と比べてはるかに多い既存ビルのZEB化は2050年のカーボンニュートラル達成のために急がれております。また、ZEBを達成することで建物の快適性を高めれば不動産価値も向上する可能性があります。

ただし、必ずしもZEBへの回収が1回の工事で完全に終わるとは限りませんので、ZEBへ改修を検討する際にはZEBプランナーに相談しましょう。

 

ZEBの認証

ZEBの認証を受けるには前提としてBELSと呼ばれる期間から評価をもらう必要があります。BELSとは建築物省エネルギー性能表示制度とも呼び、名前の通り建築物の省エネルギー量を評価する第3者認証制度です。ZEBの認証を受けるにはまずBELSでBEI(一次エネルギー消費量)0.5以下であることの証明をもらう必要があります。

BEI0.5以下を達成した後はBELSの評価も含めた報告書類を添えて、一般社団法人住宅性能評価・表示協会に登録されたBELS認証機関にZEB申請を行います。その際、補助金を使う場合はZEBプランナーの関与が必須となります。

 

ZEBの補助金

ここでいくつか環境省が出している、建物のZEB化に使用できる補助金を紹介します。前述したように補助金を利用する場合はZEBプランナーの関与が必須となります。補助金を上手く活用してZEB達成を目指しましょう。

事業名 業務用建築物の脱炭素改修加速化事業
事業目的 • 建築物分野において、2050年の目指すべき姿(ストック平均でZEB基準の水準の省エネルギー性能※の確保)を達成するためには、
CO2削減ポテンシャルが大きい既存建築物への対策が不可欠。
• 外皮の高断熱化と高効率空調機器等の導入加速を支援することにより、価格低減による産業競争力強化・経済成長と、事務所や教育施設など
を含む建築物からの温室効果ガスの排出削減を共に実現し、更に健康性、快適性など、ウェルビーイング/くらしの質の向上を図る。
事業内容 既存建築物の外皮の高断熱化及び高効率空調機器等の導入を促進するため、設備補助を行う。
○主な要件:改修後の外皮性能BPIが1.0以下となっていること及び一次エネルギー消費量が
省エネルギー基準から用途に応じて30%又は40%程度以上削減されること
(ホ
テル・病院・百貨店・飲食店等:30%、事務所・学校等:40%)、BEMSによ
るエネルギー管理を行うこと 等
○主な対象設備:断熱窓、断熱材、高効率空調機器、高効率照明器具、高効率給湯機器 等
・設備によりトップランナー制度目標水準値を超えるもの等、一定の基準を
満たすものを対象とする。
・一定の要件を満たした外部の高効率熱源機器からエネルギーを融通する
場合は、当該機器等も対象とする。
対象事業者 地方公共団体、民間事業者・団体等
補助金給付額 改修内容に応じて定額(補助率1/2~1/3相当)
募集期間 令和6年度

出典:環境省(一部抜粋)

https://www.env.go.jp/earth/zeb/hojo/pdf/02_R6_hosei.pdf

事業名 地域脱炭素推進交付金
事業目的 「地域脱炭素ロードマップ」(令和3年6月9日第3回国・地方脱炭素実現会議決定)、地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)
及び脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(「GX推進戦略」、令和5年7月28日閣議決定)等に基づき、民間と共同して意欲的に脱炭素に取り
組む地方公共団体等に対して、地域の脱炭素への移行を推進するために本交付金を交付し、複数年度にわたり継続的かつ包括的に支援する。
これにより、地球温暖化対策推進法と一体となって、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」で、脱炭素に向かう地域特性等に応じた先行的な取
組を実施するとともに、脱炭素の基盤となる「重点対策」を全国で実施し、国・地方連携の下、地域での脱炭素化の取組を推進する。
事業内容 (1)地域脱炭素移行・再エネ推進交付金
①脱炭素先行地域づくり事業への支援
2050年カーボンニュートラルを20年前倒しで実現を目指す脱炭素先行地域に選
定された地方公共団体に対して、
再エネ等設備の導入に加え、再エネ利用最大化
のための基盤インフラ設備(蓄電池、自営線等)や省CO2等設備の導入、これら
と一体となってその効果を高めるために実施するソフト事業等を支援する。
②重点対策加速化事業への支援
再エネ発電設備を一定以上導入する地方公共団体(都道府県・指定都市・中核
市・施行時特例市:1MW以上、
その他の市町村:0.5MW以上)に対して、地域
共生再エネ等の導入や住宅の省エネ性能の向上などの重点対策の複合実施等を支
援する。
(2)特定地域脱炭素移行加速化交付金【GX】
民間裨益型自営線マイクログリッド等事業への支援
対象事業者 地方公共団体
補助金給付額 脱炭素先行地域づくり事業 原則2/3
重点対策加速化事業2/3~1/3、定額 
特定地域脱炭素移行加速化交付金 原則2/3
募集期間 令和6年度

出典:環境省(一部抜粋)

https://www.env.go.jp/earth/zeb/hojo/pdf/03_R6_hosei.pdf

 

ZEB事例紹介

最後に実際に環境省のZEBポータルから、ZEBを達成した事例についていくつか紹介したいと思います。

建物名 久光製薬ミュージアム(久光製薬株式会社)
ZEBランク ZEB
建築物概要 都道府県(地域区分):佐賀県
新築/既築:新築
延床面積:687.63㎡
建物用途:事務所等
一次エネ削減率(創エネ除く/含む):65% / 103%
ZEB化のキッカケ 創業170周年を記念した事業、自社の理念と環境への取り組みをアピール 
解決のポイント ガラスを多用したデザインと全面Low-Eガラスを用いた熱負荷の軽減によって妥協のないZEBを実現
利用者の感想 ガラスを多用した建物ながら夏場でも快適

出典:環境省(一部抜粋)

https://www.env.go.jp/earth/zeb/case/new_04.html

建物名 柏崎海洋センター シーユース雷音(柏崎市)
ZEBランク ZEB Ready
建築物概要 都道府県(地域区分):新潟県
新築/既築:既築
延床面積:2,949㎡
建物用途:ホテル等
一次エネ削減率(創エネ除く/含む):51% / 51%
ZEB化のキッカケ 市の方針に沿うモデルとなる公共施設を探していたところ、設備更新時期を迎えた本施設が合致、エネルギーコストの削減とCO2排出削減
解決のポイント 熱源・給湯・昇温システムとしてコージェネレーション、空冷ヒートポンプ、吸収式冷温水機を導入
利用者の感想 改修前は、窓際は寒いという利用者の声があったが、複層ガラスの導入により改善した

出典:環境省(一部抜粋)

https://www.env.go.jp/earth/zeb/case/rnw_03.html


環境価値とは何でしょうか?環境価値にはどのような種類が存在し、どのようにして取り入れ企業はどのようなメリットを得るのでしょうか?
順番に解説していきます。

環境価値とは

環境価値とは再生可能エネルギーにより発電された非化石燃料由来の電力が持つ二酸化炭素を排出しないという付加価値のことです。二酸化炭素排出量を削減し、地球環境にやさしい社会の実現のために利用されています。

 

環境価値が必要な理由

環境価値が導入された背景には加速度的に進行する地球温暖化現象が要因としてあります。二酸化炭素、メタン、フロンといった温室効果ガスが化石燃料の大量消費や森林の伐採により引き起こされ、地球全体の気温が年々高くなっております。

そこで、化石燃料に代わり、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを積極的に取り入れるため、環境価値が導入されました。環境価値とは、再生可能エネルギーが持つ価値を、電力と二酸化炭素排出しないという価値に分けた際に、二酸化炭素を排出しない価値の部分を指します。

このように分けることで、企業同士が環境価値を取引しやすくなっています。環境価値の取引が活発化することで、環境へ配慮した取り組みが積極的に行われ、地球温暖化の防止になることが期待されています。

 

企業が環境価値を取り入れるメリット

企業が環境価値を取り入れるメリットは、ESG投資家や国際イニシアチブからの評価の他に企業ブランドの向上など様々あります。

ESG投資により資金調達が容易に

環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略で、上記3点を鑑みて投資を行うことをESG投資と言います。環境価値を取り入れ、環境や社会に配慮すれば、ESG投資家からの評価が上がり融資を受けるチャンスが高くなります。資金調達がしやすくなるという点で環境価値の導入は企業にとってメリットがあるといえるでしょう。

国際イニシアチブから評価される

環境価値はRE100をはじめとする国際イニシアチブでの活動報告に使用できる場合があります。例えば、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)と呼ばれる気候変動や水セキュリティ、森林に関する情報を収取・評価する非営利団体では非化石証書が活動の報告として利用できます。

企業ブランドの向上

SDDGsへの取り組みは企業のブランドイメージを高め、環境意識の高い購買層の評価を高め、売り上げの増加や新たな人材の獲得につながる可能性があります。

 

企業が環境価値を取り入れる方法

企業が環境価値を取り入れる方法としては証書を直接購入するか、太陽光発電を導入し環境価値を得ることの2通り方法があります。

証書やクレジットを直接購入する

企業は環境価値の証書を販売している事業者から直接購入することや、取引所で入札することによって環境価値を購入することができます。環境価値の証書は現在、非化石証書、Jクレジット、グリーン電力証書の3種類存在し、それぞれ購入方法が違います。例えば、グリーン電力証書は証書を発行している事業者から直接購入しますが、非化石証書ならば日本卸電力取引所(JPEX)でオークション形式で落札します。

太陽光発電をはじめとする再生可能電力を導入する

PPA契約もしくは自社所有で太陽光発電を導入し、再生可能エネルギーを利用することで環境価値を入手します。太陽光発電施設を導入して発電した電力は環境価値として証書発行事業者に売却したり、オークションに出品することができます。PPA契約ならば工事費などの初期費用0円で太陽光発電を導入でき、中でも環境価値だけを供給してもらうバーチャルPPAならば地理的な制約に縛られずに太陽光発電を導入できます。

 

3つの環境証書

環境価値を証書化して取引可能にしたものを環境証書と言います。環境証書にはグリーン電力証書、Jクレジット、非化石証書の3種類存在します。環境証書を購入することで、太陽光発電などの再生可能エネルギーの発電施設を自社で導入していなかったとしても、再生可能エネルギーの導入量として国際イニシアチブへの報告などで使用することができます。

また、自社で太陽光発電施設などを導入し環境価値を創出している場合、証書化して市場で売却することで売却益を得ることができます。

証書制度 対象電源・活動 価格 国際イニシアチブの対応 転売の可否
グリーン電力証書 再生可能エネルギー由来の電力
(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど)
3.5〜4.5円/kWh RE100、SBT、CDP 不可
非化石証書 再生可能エネルギー由来の電力
(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど)に加えて原子力など
0.4円~4.0円/kWh(FIT非化石証書) RE100、SBT、CDP 不可
Jクレジット 温室効果ガス(主にCO₂)の排出削減・吸収活動を「クレジット」として認証。
例:再エネ設備導入、省エネ設備、森林管理・吸収など
0.9〜1.3円(再エネ由来) RE100、SBT、CDP

グリーン電力証書

太陽光、水力、風力、バイオマスなど再生可能エネルギーが持つ環境価値を証書としたものです。グリーンエネルギーの発電事業者が発電した電力の環境価値を証書発行事業者に売却し、第三者認証機関である、日本品質保証機構(JAQ)の認証を受けて証書化します。購入方法は証書発行事業者から直接購入となります。

グリーン電力証書を入手した企業は企業の広告や製品にグリーン電力証書のマークを使用することができ、企業イメージが向上します。また、Re100やCDPなどの国際イニシアチブで報告することが可能です。

Jクレジット

省エネ機器の導入や、森林管理、再生可能エネルギーの利用による二酸化炭素の削減量を国がクレジットとして保証したものです。Jクレジットの購入方法は、仲介業者を通して取引する方法と、掲示板から直接購入する方法、制度事務局が実施しているオークションから入札する方法の3つ存在します。また、環境証書の中で唯一転売可能です。

Jクレジットの認定を受けるにはまずどのような温室効果ガス削減プロジェクトに取り組む予定であるかを記載したプロジェクト計画書を作成・登録したのちに、プロジェクト計画に基づいたモニタリングを実施します。モニタリングの実施計画に基づき、温室効果ガスの削減量を算定し、モニタリング報告書を提出して、Jクレジットの認定申請をします。

Jクレジット購入後は、CDPやRE100などの国際イニシアチブで、炭素量の算出においてJクレジット購入分を利用できます。また、温対法や省エネ法で温室子化ガスの排出量を報告する際に、Jクレジットの分だけ相殺して報告できます。

非化石証書

FIT電気、非FIT電気含む化石燃料を使わないエネルギーに発生する環境価値を証書化したものです。通常FIT制度を利用して再生可能エネルギー売却した場合、環境価値は国に売却されるので証書化はできませんが、非化石証書ならばFIT電気の持つ環境価値を証書化することができます

非化石証書には「FIT非化石証書」、「非FIT化石証書(再エネ指定あり)」、「非FIT化石証書(再エネ指定なし)」の三種類が存在します。「非FIT化石証書(再エネ指定なし)」には原子力発電など、再生可能エネルギーではない非化石電源が含まれます。

非化石証書の購入者はCDPやRE100で、非化石電源を使用した電力量として報告に使えます。非化石証書は発電事業者が認定機関から設備認定を受けることによって発行されます。発行された非化石証書は日本卸電力取引所(JEPX)の非化石価値取引市場を通して、購入希望者に売買されます。

 

環境証書の課題

環境証書にはまだまだ、問題が残っています。
それぞれ見ていきます。

Jクレジット以外の環境証書は自家消費する必要がある

非化石証書やグリーン電力証書は他社や市場に転売ができません。よって、購入した化石証書は国際イニシアチブへの報告などで自家消費する必要があります。ただし、Jクレジットであれば転売が可能です。

環境価値の導入において専門性が高い

環境価値の購入方法は証書によってことなり、また使用用途にも細かな違いがあります。環境価値を創出する場合も自社で再生可能エネルギーの発電施設を導入するのか、あるいはPPA契約で導入するのかなど考えることが多くあります。また、再生可能エネルギー業界は情報のアップデートも早く専門性が高いです。よって、環境価値を導入する際は事前のリサーチや専門家の手を借りることが必要になるでしょう。

 

太陽光発電を導入して環境価値を創出しよう

企業の環境問題への取り組みとして、環境価値を購入するだけでなく自社で太陽光発電を導入するのも一つの手段です。自社で太陽光発電を導入すれば、CDPやRE100といった国際イニシアチブで二酸化炭素削減を報告できるだけでなく、発電した電力の環境価値を環境証書として売ることで売却益を得ることも可能です。

PPAモデル

太陽光発電を導入する際は必ずしも自社で所有する必要はありません。PPAモデルで導入すれば発電所は事業者のものですが、太陽光パネルの購入費や設置費用などの初期費用を負担せずに太陽光発電を導入することができます。PPAで太陽光発電施設を導入した場合はメンテナンスの必要もありません。その代わり、一定の契約期間、毎月消費した電力をPPA事業者から購入する必要があります。

PPAの契約期間は一般的に10~20年間です。契約期間終了後は施設が譲渡されることもあります。ただし、PPAモデルで太陽光発電を導入した場合、消費した電力の環境価値が事業者側か需要家側にあるかは契約によって変わります。

バーチャルPPA

PPAモデルの中には、供給される電力のうち環境価値だけを受け取る形態のバーチャルPPAと呼ばれるモデルが存在します。需要家は毎月電力の直接供給の代わりに環境証書(非化石証書)を購入します。

バーチャルPPAは発電所から直接電力を供給するわけではないので、地理的な制約がないことが特徴です。また、電力プランを変更せずに環境価値だけを購入できます。バーチャルPPAを利用すればより手軽に太陽光発電を導入して環境価値を入手することができます。

 

まとめ

このように太陽光、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーには電力としての価値の他に環境価値という二酸化炭素を排出しないという価値が存在します。環境価値を証書化した環境証書は、環境価値を取引可能にしたものです。

購入者は再生エネルギー発電施設がない場合でも、環境証書を使ってCDPやRE100などの国際イニシアチブへ、購入した環境証書の分だけ二酸化炭素削減量として報告することができます。環境価値は環境証書を購入して獲得するほかに、自社で太陽光発電を導入して獲得することもできます。

自社で獲得した環境価値は証書化することで売却し売電収入に加えて利益を得ることもできます。簡単に自社で太陽光発電を導入するにはPPAモデルのような初期費用0円の、契約方式が手軽でおすすめです。

近年、企業イメージの向上や新たなビジネスチャンスを広げるため、あるいは社会的な要請からSDGsに取り組む企業が増えてきています。

SDGsへの取り組みは社会的影響力が大きく、二酸化炭素排出量も多い大手企業に限られるというイメージが存在するかもしれませんが、中小企業であってもイメージの向上や資金調達面でメリットがある場合があります。
また、親会社や取引先からブランドイメージを統一するために、SDGsへのコミットを求められる場合もあるかと思います。

SDGsへの取り組みと言っても様々で、具体的に何をすればいいか迷うこともあるかと思います。
では、手軽に始められるSDGsへの取り組みとは何でしょうか?
太陽光発電であれば手軽に再生可能エネルギーを取り入れることでSDGsに貢献し、電気代の削減によってコストカットをすることが可能です。

太陽光発電というと購入費や工事費といった高い初期費用や、広い設置面積がないと導入することができないというイメージがあるかもしれません。
PPA契約で導入すれば初期費用が掛からず、契約形態によって自社敷地内に設置可能なスペースがない場合でも太陽光発電を始めることができます。

SDGsとは?

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語で持続可能な開発目標を意味します。2015年のサミットで採択された、2030年までに達成されるべき目標で、17の大きな目標と、それらの目標を達成するために細分化されたターゲットで構成されます。目標の内容は、貧困や飢餓の撲滅、ジェンダー平等の実現、気候変動対策なと幅広い分野にわたります。

 

なぜSDGsに取り組む必要がある?

企業がSDGsに取り組む理由として以下の5点が挙げられます。

企業ブランドのイメージ向上

SDGsの認知度は現在かなり上がっており、特に若年層はSDGsへの関心が高いといわれています。SDGsに企業として取り組むことで、環境意識が高い層の購買意欲を喚起したり、人材の獲得につながる可能性が考えられます。

投資家からの評価向上

SDGsへの取り組みによる、環境や社会への配慮は投資家からの評価向上につながり、結果として資金調達がしやすくなるという利点があります。

SDGsへの貢献は、特にESG投資の呼び込みが期待できます。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの観点を考慮した投資のことで、2006年に国連がESG要素を投資家に求める、責任投資原則を採択してから急速に広がってきています。

似たような概念を表すワードですが、SDGSが目標だとするとESGはその目標を達成する手段という位置づけになります。企業のSDGsへの取り組みはESG投資家から高い評価を得て、資金調達がしやすくなるというメリットがあります。

将来的なリスク回避

現在、温室効果ガスの排出量やエネルギー使用に関して法規制が強化されています。2026年度から、年間CO2排出量が10万トン以上の企業を対象に排出量取引制度への参加が義務付けられています。排出量取引制度とは、政府が企業ごとに温室効果ガスの排出上限を決めて、目標を超えた企業は排出枠を買い取り、余った企業は排出枠を売却することができる制度のことです。

現在は一部大企業に対する限定的な規制ですが、今後はさらに法規制が厳しくなることも考えられるので、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーに電力を切り替えることは将来的なリスク回避にもつながります。

新たなビジネスチャンス

SDGsの市場規模は経産省の出したデータによるとSDGsの各目標の市場規模は70兆~800兆円に上るといわれています。また、排出量取引制度やESG投資のように、今後さらに環境問題や社会問題に取り組む政策が追加されていけば、SDGsへの貢献が新たなビジネスチャンスにつながることが考えられます。

企業の社会的責任(CSR)

企業の社会的責任(CSR)はCorporate Social Responsibilityの略で、企業は社会の一員として利益の追求だけでなく、環境や人の3つの側面で活動する責任を社会から求められます。SDGsに貢献することで、地球環境や社会的平等に配慮することは単純にビジネスチャンスが広がるというとだけではなく、企業が倫理的に果たすべき義務といえます。

 

太陽光発電はSDGsに貢献できる?

太陽光発電は発電プロセス中に温室効果ガスを排出しないため、Co2の削減に貢献することで、SDGsの、7番目「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」と、13番目「気候変動に具体的な対策を」の2つに貢献できます

太陽光発電をはじめとする、水力、風力、地熱などの再生可能エネルギーは、化石燃料を燃やして発電する火力発電と比べて二酸化炭素排出量が少なく、資源が枯渇する心配がないため、新たなエネルギーとして注目されています。

太陽光発電を導入すれば、SDGsへの貢献が認められてESG投資を受けられる可能性が高まります。また、年間消費電力量が日本は特例で50GWh以上の企業に限った話にはなりますが、将来的に再生可能エネルギーの使用率100%を目指していく国際的なイニシアチブre100の達成に対しても貢献することが可能です。

 

RE100について

RE100とは事業活動で使用する電力を2050年までに100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする、国際的な取り組みのことです。参加することで環境意識の高い企業というブランドイメージが付き、ESG投資の対象になる可能性が高まります。

ただし、使用電力量など参加条件が厳しく参加できる企業は影響力のある大手企業に限られます。中小企業向けには、再エネ100宣言 RE Actionという国内の枠組みがあり、こちらは使用電力の規模にかかわらず参加することが可能です。

 

企業の太陽光取り組み紹介

イオン株式会社

小売業最大手のイオン株式会社は電力消費が多く、日本の総電力の1%に相当するといわれています。イオン株式会社は22050年カーボンニュートラル宣言に賛同し、2030年までにCO2排出量を35%削減するという目標を掲げております。

具体的な取り組みとしては、全国各地にあるグループ店舗の屋上に太陽光発電を設置し、消費電力を再生可能エネルギーで賄ったり、オンサイトPPAモデルの導入や、卒FIT電力の買取など多岐にわたります。

株式会社リコー

リコー株式会社は2021年度、生産拠点にオンサイトPPAモデルで太陽光発電施設を導入し、2022年に日本国内で始まったバーチャルPPAという太陽光発電施設が出す環境価値のみを仮想的に導入する方式を採用しました。

また、太陽光発電を設置するだけでなく、市エネ評価制度や消費エネルギー診断の導入も行っております。また、2025 年5年現在19拠点が「zeb ready」以上の認証を取得しており、省エネに対する取り組みも盛んに行っております。

不二家

不二家はCO2排出量削減のために、全国各地の自社の工場に太陽光パネルを設置し、工場で使う電力を太陽光エネルギーで賄う、環境負荷が低い設備へと更新しています。また、太陽光パネルの設置だけでなく、各事業所・工場において省エネルギーシステムを導入し、エネルギーの削減や合理化に努めております。

三菱電機株式会社

三菱電機は株式会社大林組、株式会社GSユアサと協同で北海道釧路町トリトウシ原野太陽光発電所に、蓄電池併設型のメガソーラー施設を建設しています。また、三菱電機はZEB関連技術の開発加速を目的に建てられた「SUSTIE」は6000㎡以上の中規模オフィスビルでありながら初めて「ZEB」認定を取得しています。

大和ハウス工業株式会社

大和ハウス工業株式会社は、自社の保有する物流施設の屋上にオンサイトPPAで太陽光発電施設を導入しており、入居しているテナント企業とともにカーボンニュートラルの実現に取り組んでいます。また、2024年からはオフサイトPPAにも力を入れており、大和ハウスが開発・運営している設備から発電された電力が遠く離れた阪神甲子園球場に供給されております。

 

ZEBとは?

ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、ビル内で消費する電力量と差し引きでゼロにしている建物のことです。ZEBを達成するには建物で消費する電力量を省エネで減らし、創エネで電力を発電し差し引きで年間の消費エネルギーをゼロにします。

ZEBには4段階の認定基準があります。下から順番に、「ZEB Oriented」「ZEB Ready」「Nearly ZEB」「ZEB」という名称で、ZEBと表現する場合一番下の段階も含めた広い意味で使用されることも多いです。

ZEB 基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを除いて、50%以上を削減して、
基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを含んで、100%以上を削減した建物のことです。
Nearly ZEB 基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを除いて50%以上を削減して、
かつ基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを含んで75%以上を削減した建築物のことです。
ZEB Ready 基準一次エネルギー消費量から再生可能エネルギーを除いて、
50%以上のエネルギーを削減した建築物のことです
ZEB Oriented 基準一次エネルギー消費量から、
建物の用途ごとに決められた割合のエネルギーを削減した建物のことです。
A) 事務所等、学校等、工場等は40%以上の一次エネルギー消費量削減
B) ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等は30%以上の一次エネルギー消費量削減
また、さらなる省エネのために現状では未評価の技術を導入することが求められます。

 

BEMSとは?

BEMSとは建物内で使用するエネルギーの状況をリアルタイムで監視して、制御することでエネルギーの消費量を最適化し、ZEBの達成に役立つシステムのことです。

パソコン1台でエネルギーの流れを管理できるようになるので導入さえすれば、比較的簡単に省エネやZEBを達成しコスト削減を行うことができます。ただし、BEMS導入するには、ビルの中にセンサーや制御装置、監視装置を設置する必要があり、設備購入費や設置工事費などを支払う必要があります。

 

手軽に太陽光発電を導入するには?

ESGやZEBのために、太陽光を始める場合手軽に導入する方法としてPPAモデルが存在します。PPAモデルで太陽光発電を導入すれば初期費用0円で太陽光発電が導入でき、ZEBやESGを目指すことができます。

PPA

PPAモデルとは第3社所有モデルとも呼ばれており、PPA事業者が設置した太陽光発電を、太陽光発電を利用したい需要家が毎月使用した電気代を支払うことで、利用する契約モデルのことです。太陽光発電は決められた契約期間の間、設置事業者の所有物ですが、需要家は太陽光パネルの購入費や工事費などの初期費用を払う必要がありません

オンサイトPPA/オフサイトPPA

PPAには発電所の設置場所によってオンサイトPPAかオフサイトPPAという風に名称が変わります。自社の敷地内に太陽光発電施設を設置する場合はオンサイトPPAと言います。

一方で、自社の敷地外から電力を供給してもらう方法をオフサイトPPAと言います。オフサイトPPAは自社に発電施設の設置場所がない場合でも、太陽光発電を導入できますが、オンサイトPPAと比べると、送配電網を使用する託送料金がかかるので、毎月の電気代が割高になります。

フィジカルPPA/バーチャルPPA

他にもPPA契約の分け方として、フィジカルPPAとバーチャルPPAという分類あります。フィジカルPPAとは、太陽光発電施設から送られてくる再生可能エネルギーを電力と環境価値に分けた時に、直接電力供給してもらうPPAを指します。

一方で、バーチャルPPAとは環境価値だけを供給してもらうPPAを指します。省電力のために電力供給も行いたい場合はフィジカルPPA、環境価値だけを獲得し企業ブランドを高めESG投資などを狙うのであればバーチャルPPAがおすすめです。

 

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