農地転用が不要に?農山漁村再生可能エネルギー法が施行
2014年5月1日より農山漁村再生可能エネルギー法が施行されました。これにより『農業振興地域に該当しない第一種農地(荒廃農地)の土地でも太陽光発電事業のために農地転用(みなし転用)ができる』ようになります。
この制度のモデルは2011年の東日本大震災により発足した『東日本大震災復興特別区域法』です。天災に強い地域づくりを目的とし、また放射性物質の被害で使い道が困難な農地を、農林水産大臣の許可によりみなし転用ができるようになっています。
今回の農山漁村再生可能エネルギー法は東日本大震災復興特別区域法の全国バージョンといえます。
農山漁村再生可能エネルギー法の概要
平成25年11月15日に農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)が成立し、11月22日に公布され、平成26年5月1日に施行されました。
この法律は、農山漁村における再生可能エネルギー発電設備の整備について、農林漁業上の土地利用等との調整を適正に行うとともに、地域の農林漁業の健全な発展に資する取組を併せて行うこととすることにより、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー発電を促進し、農山漁村の活性化を図るものです。
出典:農林水産省 農山漁村再生可能エネルギー法
みなし転用をするためにはどうすればいいの?
(1)基本計画
同法では、市町村は国の定めた「基本方針」に基づき、当該市町村の区域における農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進による農山漁村の活性化に関する「基本計画」を作成できるとしている。「できる」という規定ぶりであるので、実際に基本計画を作成するかどうかは各市町村の裁量にかかっている。従って発電事業者としては、まず当該市町村が太陽光発電事業に理解があり、これを推進することに熱心かどうかを見極める必要がある。その上で、同法の基本計画の提案制度を用いて、当該市町村に、発電事業者が太陽光発電を計画している地域を再生可能エネルギー発電設備の整備を促進する区域とする基本計画の作成を働きかける必要がある。
2014年5月16日に出た国の基本方針では、提案の中で、農林漁業の健全な発展に資する取組の内容を記載することが要求されている(取組例は後述)。基本計画を作成しようとする市町村は、基本計画の作成及びその実施に関し、必要な事項について協議を行うための協議会を組織することができるので、協議会が組織された場合には、発電事業者は構成メンバーとなって協議をリードしていく必要がある。
(2)設備整備計画
発電事業者が太陽光発電を計画している地域を区域に含む基本計画が公表された後に、発電事業者は太陽光発電の「設備整備計画」を作成し、基本計画を作成した市町村に認定申請をすることになる。設備整備計画を作成する上で重要なのは「農林漁業の健全な発展と調和のとれた」ことをいかに説得的に記載するかである。具体的には「農林地の農林業上の効率的かつ総合的な利用の確保、農林漁業関連施設の整備、農林漁業者の農林漁業経営の改善の促進、農林水産物の生産又は加工に伴い副次的に得られた物品の有効な利用の推進その他の農林漁業の健全な発展に資する取組の内容」を記載することが要求されている。国の基本方針では、具体例として、発電事業者が売電収益の一部を支出して太陽光発電設備の周辺の農地の簡易な整備等を行うことにより、農業の生産性向上に資する取組が挙げられている。
例えば、太陽光発電の売電収入を用いて、太陽光発電所の隣の荒廃した農地を、農業が再開できる農地に戻すことに協力することが考えられる。1ヘクタールの荒廃農地を元に戻すのに100万円程度の資金がかかるが、売電収入の数パーセントを用いてこれらの農地再生事業に貢献することが考えられる。売電収入連動制にしておけば、万一発電所の不具合で発電量が減った場合には、地域貢献額も割合に応じて減少するので、事業の採算性に与える影響は少なくて済むことになる。
また、太陽光発電所の用地を賃貸する場合、年間賃料として1平方メートルあたり150円以上の値段がつくことが多いが、農地の賃貸料は普通畑で年間1平方メートルあたり10円程度である。太陽光発電所用地の賃料を決定する際に、上記地域貢献額を拠出することを勘案した金額の決め方をすることもできると思われる。
さらに基本方針では売電収益の一部を活用して、太陽光発電設備が整備される区域が含まれる地域において無農薬で栽培されるなど特色のある米の販売を都市部において促進する取り組みや、風力発電の例であるが、風力発電から得られた収益の一部を基金化し、地域の重要な資源である森林の間伐や間伐材の搬出費用に使う取り組み等が挙がっている。
注意すべきは基本方針が留意事項として記載している下記の点である。すなわち売電収益から発電設備を整備した土地の地代や賃料を払っているだけでは農林漁業の健全な発展に資する取組とはならないことである。また、設備整備契約で約束したこれらの取組を怠ると、最悪の場合は設備整備計画の認定を取り消されることがある。この場合には農地のみなし転用の効果がなくなり、太陽光発電所を撤去しなければならなくなるので注意が必要である。
(3)設備整備計画の認定の前提となる農林水産大臣の同意
(1)農地を農地以外のものにし、又は(2)農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため当該農地又は採草放牧地について所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を取得する行為であって、農地法の許可を受けなければならないもので、同一の事業の目的に供するため4ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合等のときは農林水産大臣の同意がいる(4ヘクタール以下の場合は都道府県知事の同意)。農林水産大臣は農地法上許可ができない場合に該当しないかの審査を行う。(4)設備整備計画の認定とみなし転用許可
設備整備計画が認定され、認定設備整備者となった発電事業者が、認定設備計画に従って再生可能エネルギー発電設備等の用に供することを目的として農地を農地以外のものにする場合には農地法第4条第1項の許可があったものとみなされる(みなし転用許可)。同様に認定設備整備者が農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため当該農地又は採草放牧地について所有権又は使用及び収益を目的とする権利を取得する場合には農地法第5条第1項の許可があったものとみなされる(みなし権利移動許可)。
これらのみなし許可制度を活用して、太陽光発電所用地の荒廃農地への拡大が期待される。
出典:環境ビジネス 太陽光発電用地がなくて困っている?農山漁村再生可能エネルギー法の活用は考えましたか?
農地転用できずに太陽光発電事業を諦めていた方に救いの手
土地を所有しているが転用できずに太陽光発電事業を諦めていた方に救いの手が伸びたと言っていいかもしれません。農山漁村再生可能エネルギー法は施行されて間もないので、みなし転用できるまでどのくらい時間がかかるかどうかは定かではありませんが、少しの可能性を信じて各地域の農業委員会に相談してみるのもいいかもしれないですね。これから農山漁村再生可能エネルギー法に準じて太陽光発電事業に着手する事例は増加するものと思われます。
農地転用よりもメリットが大きい
現在の農地転用は3年間の一時転用が基本となりますが、農山漁村再生可能エネルギー法のメリットは首長が認めることでみなし転用となることです。3年の一時転用ではローンが通りにくいデメリットがありましたが、みなし転用となればローンも通りやすくなり、農地への太陽光発電の設置が進むことが予想されます。
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産業用・土地付き分譲型太陽光発電に関する最新ニュースや、よくある質問をまとめています。これから野立て、農地、遊休地、工場の屋根などに太陽光発電を検討されている方は参考にしてください。