保守・運用・トラブル対策
太陽光発電を長く使っていくうえで、定期的なメンテナンスと点検は欠かせません。では、メンテナンスの費用や具体的な方法、適切な頻度はどれぐらいでしょうか?また、点検とメンテナンスの違いは何でしょう?それぞれ、解説していきます。
太陽光パネルのメンテナンスと点検の違い
太陽光発電のメンテナンスと点検は同じような使われ方をすることもありますが、微妙にニュアンスが違います。
太陽光パネルの点検とは、太陽光パネルが破損や発電効率の低下などなく、運用できているか確認する作業のことを指します。一方で、メンテナンスとは太陽光パネルに汚れがあった際に掃除したり、故障した機器を交換したりなど手入れをすることを指します。
太陽光発電をなるべく長く使用するためには、定期的な点検と汚れや破損があった際はメンテナンスを行うことが重要です。
メンテナンス・点検は義務化されてる?
低圧(50kw未満) | 高圧(50kw以上) | |
---|---|---|
FIT | 義務あり | 義務あり |
非FIT | 義務なし | 義務あり |
太陽光発電のメンテナンス・点検は住宅用・産業用ともに義務化されております。
点検義務はもともと、50kw以上の太陽光発電にのみ義務付けられていましたが、2017年の施工の改正FIT法で、住宅用太陽光発電まで適用範囲が拡大されました。よって、50kw未満でFITを適用しない場合を除き定期点検は必ず実行しなくてはなりません。
太陽光発電の適切な点検頻度
太陽光パネルの点検・メンテナンス頻度 | |
---|---|
低圧(50kw未満) | 4年に1回以上 |
高圧(50kw以上) | 受変電設備で2~6か月に1回 パワーコンディショナーで6か月に1回 |
出典:太陽光発電システム保守点検ガイドライン
https://www.city.tokamachi.lg.jp/material/files/group/21/guide_line.pdf
50kw未満の低圧の太陽光発電の推奨されるメンテナンス頻度は4年に1回以上です。一方で、高圧の太陽光発電はパネル・パワーコンディショナーと受変電設備で推奨されるメンテナンス頻度が変わります。受変電設備で2~6か月に1回、パワーコンディショナーで6か月に1回、年に2回以上の頻度で点検が義務付けられています。
定期点検と日常点検
推奨されている頻度での定期点検は専門業者に依頼しましょう。太陽光発電システムの詳細な点検には専門的な知識と機器、経験が必要であり、販売店や施工店、パネルメーカーなどに依頼することをおすすめします。
また、太陽光発電は業者に依頼する定期的な点検以外にも目視で確認するなどできる範囲でいいので、日常的に点検することをおすすめします。
一般社団法人・太陽光発電協会が出しているガイドラインによると日常点検の要綱は以下のようになっています。
太陽光パネルの点検・メンテナンスの費用 | |
---|---|
住宅(10kw未満) | 5~10万 |
低圧(50kw未満) | 10~15万 |
高圧の場合(50kw以上) | 100~200万 |
出典:関西電力
https://sol.kepco.jp/useful/taiyoko/w/taiyoko_tenkengimu/
太陽光発電施設の規模によって変わってきます。
出力が10kw以下の住宅用太陽光発電施設の場合は5~10万と言われております。
出力が50kw未満の低圧の太陽光発電の場合、規模にもよりますが10~15万と言われています。そして、出力が50kw以上の高圧の太陽光発電所の場合、メンテナンス費用は100~200万にも及ぶといわれております。
太陽光発電のメンテナンス・点検のメリット
発電効率の低下を防ぐ
太陽光パネルに汚れがついたまま放置したり、破損に気づかず交換をせずにいると、発電効率が低下してしまう可能性が考えられます。発電効率が落ちると売電収入や自家消費で削減する電気代が少なくなってしまい、パネルを修理交換するよりも、経済的な損失が多くなってしまう可能性が考えられます。パネルの発電効率低下を避けるためにも、定期点検を行いいち早く太陽光発電の汚れや破損を探しましょう。
事故のリスク低下
太陽光パネルを定期的にメンテナンスすることは事故のリスクを減らし、安全性を高めることにも貢献します。太陽光パネルは通常強風が吹いたぐらいで飛ばされることはありませんが、経年劣化でボルトが緩むなどすると、設置場所から外れてしまう危険性があります。また、同じようにケーブルが経年劣化することで漏電し、火災が発生する可能性もあります。このような事故を防止するためにも、太陽光パネルは定期的に点検することをおすすめします。
太陽光発電の点検方法
太陽光発電の点検方法は、目視で確認する方法と機材で測定する方法の2つに分けられます。目視で確認する方法は、目視で太陽光パネル・パワコン・配線・架台・ケーブルなどに異常がないか確認します。機器で測定する方法は、専用の機器を使い太陽光発電の発電効率が下がってないか確認したり、漏電のリスクがどれだけあるかチェックします。それぞれ詳しく見ていきます。
太陽光パネルの破損状態を確認する
太陽光パネルに破損や、鳥の糞など汚れがついてないか目視で確認します。太陽光パネルに汚れや破損があると発電効率が大きく低下します。また、パネルが破損しているのを放置した場合、かけたパーツが風で飛ばされ近隣住民に当たってしまうなど事故が発生する可能性があります。発電効率や安全性に大きく影響していく部分なので、しっかりと確認をしましょう
太陽光パネルの固定状態を確認する
太陽光パネルの固定状態を確認することも、安全性を高めるうえで需要なポイントになります。
ケーブル・コネクタの接続状態を点検する
ケーブルに傷や劣化、接続不良がないか目視で確認します。
例えばケーブルに破損があった場合、漏電から火災につながることもあるので、接続に不備があった場合は直ちに対処しましょう。
パワコンの発熱や異音がないか確認する
パワコンは内部に稼働機関があることから、比較的に壊れやすい機器です。
パワコンのフィルターにつまりがないか、異音や汚れがないか確認する必要があります。
発電量を測定する
太陽光パネルが性能どおりの発電能力を保っているか機器を使って測定します。
専門業者が測定器を使って計測するため、正確な値が出ます。測定器でなくても、住宅用太陽光発電設備の場合モニターから確認することが可能です。
絶縁抵抗を測定する
絶縁抵抗とは電気機器から電気がどれだけ漏電しにくいか値で示したものです。
絶縁抵抗が高いほど漏電しづらく安全性が高いといえます。点検では太陽光発電専用のPV専用絶縁抵抗計を使用して、絶縁抵抗が基準値を満たしているか確認します。
接地抵抗を測定する
接地抵抗とは電気設備から地面に電気が流れる際に、電気がどれだけ流れにくいか値で示したものです。接地抵抗が低いほど、電気がスムーズに流れ雷が落ちた際の安全性が高いです。太陽光発電の点検では接地抵抗測定系を使い、接地抵抗を計測します。
太陽光発電のメンテナンス
太陽光発電を点検して異常が見つかった場合、メンテナンスを実行して手入れをする必要があります。太陽光発電のメンテナンスにはパネルやパワコンの清掃から、周辺の草刈りまで様々です。それぞれ見ていきましょう。
パネルの清掃
太陽光発電に汚れが付着している場合、発電効率が下がる可能性があるのでパネルの清掃が必要になります。太陽光パネルが汚れてしまう原因は、埃や鳥の糞、落ち葉、黄砂など様々です。自分で清掃するとパネルを傷つけてしまう危険性があるので清掃をする際は業者に依頼しましょう。専用の洗浄機を使い太陽光パネルをきれいにしてくれます。
パネルの冷却
太陽光パネルは気温による発電効率の低下を防止するために、冷却が必要なことがあります。特に最も一般的な結晶シリコン系の太陽光パネルは、夏場に気温が上がると発電効率が下がりやすいため高温対策が必要です。例えば、太陽光パネルの周辺にスプリンクラーを設置し、複数のパネルに散水する製品も存在します。ただし、パネルに散水を続けると当然ですが水道料金が発生します。パネルを冷却する際にはコストと釣り合うか試算してから実行しましょう。
パネルの修理・交換
太陽光パネルが破損した場合は、速やかに修理や交換を行いましょう。パネルが破損する原因は主にカラスによる被害とマイクロクラックの2つです。一番多いといわれているのがカラスによる投石です。カラスは非常に頭が良く、太陽光パネルの上に遊びで投石を繰り返すことがあります。被害が広範囲にわたり、確実な対策方法がないので非常に厄介です。マイクロクラックとは制作過程に発生した小さなヒビのことです。この品質検査でも発見できない小さなヒビが、気温の変化などで大きくなり、やがてヒビとなってガラスを破損させます。パネルが破損した場合は速やかに購入先のメーカーに連絡しましょう。破損したシステムを一度停止するには安全で適切な手順が存在します。また、破損の原因によってはメーカーの保証が適用できる場合があります。
パワコンの清掃
パワコンは太陽光発電システムの中で最も壊れやすい機器です。
なので定期的に異音や異臭汚れがたまっていないか点検し、居樹があった場合はメンテナンスをする必要があります。例えば、パワコン内部の冷却ファンやフィルターは、埃や小さなごみで詰まって冷却機能が下がり熱がこもってしまうことがあります。フィルターやファンに汚れがあった場合は、安全のためにパワコンを停止させてから、掃除機でフィルターやファン表面のほこりを掃除しましょう。
パワコンの交換
パワコンは内部に可動部分ががあるため、太陽光パネルよりも壊れやすくなっています。パワコンが故障してしまったり寿命を迎えた場合は、製品ごと買いなおすのが基本となります。経産省の資料によるとパワコン1台交換するのにかかる費用は1台あたり約42.3万円が一般的な相場とされています。ただし、メーカーの保証が使える場合があるので、パワコンが壊れた際はまずメーカーに確認しましょう。パワコンは長く使う製品なので定期的にメンテナンスしてなるべく寿命を延ばしましょう。
ケーブルの接続を修復する
ケーブルの接続不良を修復するのも重要なメンテナンスの一つです。施工不良があったり、設置時に問題がなくても経年劣化や野生動物による影響でケーブルがたるんでしまうことがあります。配線がたるんでしまうと、発電効率が落ちるだけでなく、ショートや漏電のリスクを高め最悪の場合火災へと発展する場合もあります。事故防止のためにもケーブルの接続不良は見逃さないようにしましょう。
架台のさび対策・さび取り
太陽光パネルの架台は経年劣化や塩害による腐食で錆びることがあります。架台が錆びると太陽光パネルの固定が緩くなり、最悪の場合落下して破損する危険性もあります。架台のさびを防止するために定期的に架台を点検し、防錆処理やさびがあった場合は清掃を行いましょう。溶融亜鉛メッキを施した架台やステンレス製の架台を選択することで錆びを防ぐことができます。
ボルトの締めなおし
太陽光パネルを固定しているボルトは長年の使用による振動で、緩んでいることがあります。パネルや架台を固定しているボルトが緩んでいるとパネルが落下する可能性もあります。定期的に点検を実行し、緩んでいた場合は締め直しましょう。
周辺環境の整備
周囲の雑草が生えていると、影で日光の量減ったり雑草の中に害虫が潜んでいたりする場合があります。草刈りや周辺の掃除をしっかりと行い環境を整備しましょう。
PPAモデルならばメンテナンスは必要なし
PPAモデルとはPPA事業者と電力を使用する需要家が、10年~20年間にわたる長期契約契約を結び、太陽光発電を設置してもらう契約形態のことです。ただし、契約期間の間は電力の売電ができず、有償で設置事業者から電力を購入することで電力を利用できます。PPAモデルを利用して太陽光発電を設置した場合、メンテナンスの必要はありません。太陽光発電の購入費や工事費などの初期費用やメンテナンス費はすべて設置事業者が支払います。環境問題への取り組みで、企業イメージを上昇させるため手軽に太陽光発電を始めたい企業には特におすすめの方法です。
産業用・分譲型太陽光発電リサーチ
ニュース・よくある質問

産業用・土地付き分譲型太陽光発電に関する最新ニュースや、よくある質問をまとめています。これから野立て、農地、遊休地、工場の屋根などに太陽光発電を検討されている方は参考にしてください。